祝瓶山から望む朝日連峰 11月18日撮影
正月の朝日連峰(大朝日岳)
平成28年1月1日~2日
登山をされている皆さんは普段からトレーニングなどされているものでしょうか?
もし、されているようならどのようなことをしているものでしょう?
登山ブームということもあってか、近年は多くの雑誌類が出回っていて、それらの中でトレーニング方法などの内容が掲載されているのを時折見かけることがあります。
筋力運動やジョギングなどトレーニングの方法も様々あろうかと思いますが、実際のところ効力としてはどうなのでしょうか?
そんななか「ジョギングやマラソンは登山のトレーニングにはならない」という言葉を多くの人から聞きます。
私自身もそれは感じており「やらないよりやった方がまし」程度にしか思えません。
また山中で疲弊する箇所についても筋力の鍛え方をいろいろと試してみましたが決め手となるトレーニング方法が見つからず、どうも使う筋肉が違っているように思えてなりません。
例えばよく山中で疲弊する内転筋にしても下界で一生懸命に鍛えても山では変わらず同じように疲弊します、これではどうトレーニングをすればいいのか分からなくなってしまいます。
おそらく私が思うに内転筋とは別の、内転筋に近い部分の筋肉が疲弊しているように感じてならないのですが、皆さんはどう思いますでしょうか?
元来、私は怠けものであり、登山をするためにわざわざトレーニングをすることはありませんでした。
私にとってトレーニングなんてちっとも楽しいなんて思えず、逆にとても辛いものであると感じていましたし、それに一応こんな私でも日々仕事や生活に追われる毎日を過ごしており、日常生活において何かを犠牲にしなければトレーニングに勤しむことはとても無理であります。
ところが初めて正月の飯豊に登った時、あのあまりの過酷さに恐れをなし、一度正月の飯豊登山を経験して以降は何かを犠牲にしてもいいから正月前だけでも間に合わせ程度ではありますがトレーニングを積むことにした次第です。
そんな私が偉そうにトレーニング方法のことなどとても恥ずかしくて書くことはできないのですが、いろいろ試してみて出た結論は登山のトレーニングは山に登ることが一番だということが間違いないということでした。
そこで今年は正月に向けてトレーニング方法を変えてみることにしました。
私の勤務する会社は胎内市の山間にあり、幸いに近くには櫛形山脈といった里山があるので、仕事の合間の明るい時間帯に登れるときはそれらの山に登り、時間がないときは夜に懐中電灯を持って近くの神社の階段を何往復もするなど、とにかく何があっても毎日欠かさず山に登るか、神社の階段を往復するといったトレーニングを繰り返しておりました。
今までよりもいっそう激しいトレーニングに励んだのは、加齢とともに体力や筋力が徐々に衰え、それに伴い気力までもが衰えてしまうので、今思うにそれらの不安を解消しようとトレーニングは年々激しさを増していったように思います。
ところが常日頃からトレーニングをしていなかったのが秋ごろから急激なトレーニングを始めたものですから体が耐え切れず悲鳴をあげてしまったのではないでしょうか。
それらが原因となり、今回の正月の朝日連峰登山は激しい膝の痛みで途中下山といった無残な結果に終わってしまいました。
そんなわけで内容としては特に書くことがないのですが、一応記録ということでざっと内容をここに記しておこうと思います。
1月1日
この冬は12月に入っても暖かい日が続き、数日おきに青空が広がる日が訪れる、そんな珍しい12月となりました。
この気候では十分に勝算はあると踏んでいたのですが、正月休みに入ったとたん「そう簡単には登頂させないよ」と言わんばかりに気温こそ高めではあるものの、雪ではなく雨の悪天が続くようになりました。
冬の雨は雪よりも厄介です。
そんな天候を見計らって今年の出発は元旦からにしました、正月休みの後半に晴れ間が訪れるのを期待しようという考えです。
今回はゆきみの会の佐藤さんが初日だけ日帰りでラッセルの手伝いに来てくれます。
それにしても初日だけでも同行者がいるということは非常に助かります。
あの長い林道をラッセルしていただけるのはとても助かりますが、それ以上に精神的にとても楽でした。
今まで私は何年かの間一人で登っていました、我ながら「よくもまあ今まで一人で・・・」と同行者が来てくれて初めて精神面でも過酷だったということに気がつきました。
曇り空の中、いつもより少くなめの雪の林道で佐藤さんのラッセルは快調に伸び10時前には日暮沢小屋に着くことができました。
去年は一人で7時間ほどかかったのですから、今年は驚異的な早さでの到着です。
小屋に入ると荷上げ品をザックに詰め、一段と重くなったザックを背負って再び出発。
徐々に深くなる積雪も佐藤さんのお陰で昼頃には尾根の末端へ辿り着くことができました。
佐藤さんとはここでお別れ、苦しい林道を簡単に通過させていただき非常に助かりました。
ここまでは体調は良好、気力も充実しております。
ところがここから始まる急登を登り始めたあたりから膝に痛みが出てきました。
そういえば膝の違和感はトレーニングを始めて少ししたあたりからあったように思います。
そしてハナヌキ峰付近まで来たところでとうとう耐えがたい膝の痛みに先に進むのを断念し、ここで幕営する決断をしました。
早めに行動を切り上げて膝を休め、明日に備えるといった作戦をたてることにしました。
ところが膝の痛みは一向に治まる気配がありません。
痛む膝をかばいながら何とかテント設営を終え、早々に寝袋に潜り込みます。
夜は雪ではなく雨がテントをたたき、除雪に出ることはありませんでした。
しかし癒えない膝の痛みへの不安、明日は進むべきか下山するべきか?
そしてせっかく今まで必死で準備してきたことに対する痛切な思い。
さらに明日の行動は大丈夫か?仮に登頂を諦め下山したとしてもあの長い林道を歩ききることができるのか?
そして来年以降の正月の登山や今後の登山方針はどうするか?
いろいろなことが頭の中を駆け巡る。
奥深い朝日連峰の一角で、テントの中で悔しさと不安を抱き、せっかく静かな夜なのにほとんど眠ることができないまま朝を迎えました。
1月2日
雨はやんで気温も高く暖かい、景色も良く見える。
前進するには格好の気候条件です。
テントを撤収してから少し歩いてみると膝の痛みは消えておりました。
「やはりできるものならこのまま登りたい」。
でも「さらに上まで登って膝に痛みが出たらどうしようか?下手をすると遭難騒ぎへと発展する可能性だってある」
あれこれ考えながら歩いているうちにやがてほんの少しずつであるが膝が再び痛くなってきた。
「今なら林道にトレースが残っているだろう、この痛む膝で少しでも歩きやすいうちに下山すべきなのではないか」ここでようやく私の心の中では下山と言う苦渋の結論に達しました。
ここは安全を最優先すべきと考え非常に残念でありましたが断腸の思いで引き返すという決断をしました。
下りながら再びいろいろなことを考えました。
「もう正月山行は止めた方がいいのではないか?」
「そろそろ限界にきている、ここは潮時だろう。」
「やはり一人では過酷すぎる」
「来年から正月は燕岳とか八ヶ岳あたりの気楽な山にでもしたらどうか?いや他の山は年をとってからでも行ける」
「今は、やはり俺は飯豊や朝日に登りたい、まだできる、もう少し頑張ろう、一からやり直そう」
そんな自問自答をずっと繰り返しておりました。
長い林道を歩ききり、無事に根子集落に着くころ私の気持ちは固まっておりました。
「この先も登りたい山に登ろう」それが結論でした。
また来年、必死で準備をして大朝日岳を目指そうと、私は民宿大原で遅い昼食を食べながら来年の正月大朝日岳登山のプランを早くも練り始めておりました。
正月が明け、現在の私は出張で山形県酒田市に来ています、いわゆる単身赴任です。
それにしても一人のホテル暮らしはなかなか快適です。
今回の出張は広い範囲で地面に穴を掘るといった外仕事の作業内容だったのですが、かじかむ手を守るため車の奥から引っ張り出したボロボロの防寒ゴム手袋は左右別々の物、雨具は穴と破れが多く、長靴にも穴が開いていて水が漏れ、チャックが壊れた防寒着は前を閉じることができず荷造り用の紐で縛って着用するも雪が吹き込んできて大変です、それでも何とか作業をすると、やはり思った通り作業着や防寒着が雪と泥でドロドロに汚れてしまいました。
しかも今週は着替えを忘れてきており、汚れた服装を着替えることができず5日も同じ服装で過ごしております。
このボロ雑巾スタイルはなんだかまるで私が登山をしている時と同じになってしまいました。
1月20日、そんななか今季最強といわれた寒気が抜け、滞在中の酒田市にもようやく青空が見えるようになりました。
ようやく見え始めた周囲の山々に目をやると、北には冬空に輝く鳥海山が大きく見事な姿を見せています。
あの雄大な姿に山を知らない人でも「凄い山だね、なんて山?」と興味を示し、聞いてきます。
そして南に目をやると純白に染まった月山とその奥に大朝日岳をはじめとした朝日連峰が秘境の佇まいで聳えています。
日本国内でもっとも厳しい気象条件と思われる三つの峰々が冬晴れに日に、その姿をここから垣間見ることができます。
その中でも朝日連峰は奥深くスキー場などといった施設も一切なく、冬になると完全にその道は閉ざされてしまいます。
日本海側の劣悪な気象条件を受ける山としては海からせりあがるように聳えた独立峰である鳥海山あるいは月山に一歩譲るとしても、朝日連峰のアプローチの悪さは圧倒的で、麓集落から登山口まで道のりが長いうえ、さらに登山口から稜線に至るまでにも多くの峰々を越えなければならず、冬季に登頂するには日本一難しい山と言っても過言ではないのではないでしょうか。
2年前まで必死で正月に通い詰め、あれほど厳しかった飯豊連峰の北股岳や本山でしたが、朝日連峰はそれよりさらにアプローチや気象条件に関して言えば厳しいように思います。
登頂に至るまで要する日数は推定で、最低でも5泊6日程度は見込まなければなりません。
凄まじい猛吹雪の中でのテント生活をそんなに長く過ごすことができるものか・・・?
朝日連峰には去年から挑戦し始めたわけですが、そう簡単にいくものとは思っておらず、2年目の挑戦となる今年の目標は去年到達したハナヌキ峰より先、できれば古寺山までといった計画で臨みました。
しかしそれにも遥か及ばず、まったくの無残な結果となりました。
少しずつでも先に進みたいのに天候にも恵まれず、今回は膝の不調もあって攻略の糸口でさえ見えてこない状況が続きます。
そんな難攻不落の朝日連峰ですが、なんとか登りたいものです。
いつか朝日連峰に認めてもらえるまで頑張りたいと思います。
まず、それにはしばらくの間、膝と他にも長年の登山で体にガタがきている箇所があって、それら傷んだところを治すことに専念しなければならないようです。
まあちょうど良い休憩期間ととらえることにしようと思います。
リフレッシュ!リフレッシュ!
※出張期間中はパソコン環境の都合によりホームページを更新することができず、出張を終えた時点でこの文章を掲載しました。
正月の山行でしたが、掲載は2月にずれ込んでしまいました。