平成28年3月1日

 

天井山~岳ノ山

 

 

 

なにしろ私はまだまだ病み上がりというか病み中の身でありまして、先日は足慣らしのため雪の少ない秩父の山に遠征に行きましたが、今度は徐々に雪山を歩くことをしなければならないと考えておりました。

 

 

 

10日ほど前のことになりますが、近くで足慣らしが出来ないものかと思って旧朝日村の天井山へ登りました。

 

丸い山容の天井山のすぐ横には急峻なスラブを纏った鋭鋒の岳ノ山が聳えております。

 

その時は天井山から岳ノ山に登ろうと思って比較的なだらかめの尾根に向かって銚子沢に下って行きましたが、崖状になった銚子沢を越えることが出来ませんでしたし目の前にある岳ノ山に登る尾根もあまりにも急な俎板状になっていて、ここを登るには非常に難しいように見えました。

 

その時は平日に仕事をさぼって行ったものですから時間的にも余裕がなく岳ノ山は断念して戻ってきました。

 

この二つの山は以前から調べてみているのですが、個別には登っているものの天井山から岳ノ山に縦走した記録はないようでした。

 

確かに岳ノ山は天井山から縦走しようとすると、いくつかある尾根の大半は俎板状となっていて登攀困難と思われます。

 

しかし地図を見る限り遠回りをすれば縦走は可能であろうと思いました。

 

下山後は再び地図を良く見直して、もう一度ルートを再考し、時が来るのを待ちました。

 

なにしろ会社から45分で登山口まで行け、時間的にも5時間から6時間程度で登ってこれると思うので休日に行くにはもったいないです、時間を有効に使おうと平日の天気の良い日に仕事の都合を見計らった結果、3月1日にその日はやってきました。

 

 

 

まず最初は天井山まで登りますが国道脇に聳えるこの山は駐車スペースからダイレクトに尾根に乗ることが出来るので、アプローチは非常に楽です。

 

ただその分、国道脇に会社の車を止めることになるので人に見つかりやすく、知り合いにでも見つかろうものなら「平日だというのに何をやっているんだ」ということになります。

 

「知り合い、特に会社関連の人たちに見つけられませんように」と祈りながら天井山の尾根に取付きました。

 

杉林を抜けるとブナ林となり急な登りとなりますが、広めの尾根に綺麗なブナの林となっていて非常に気持ちよく歩くことが出来ます。

 

 

 

適度に汗をかいた頃になだらかな天井山の山頂となります。

 

ブナの木々に守られた静寂で心休まる山頂は木々の間から景色を垣間見ることが出来ます。

 

 

 

天井山を離れ、岳ノ山へと向かいますが最短で行こうとすると前回と同様に銚子沢に阻まれ、さらには俎板状の尾根が待ち構えております、今回は大きく遠回りをして東へと進路をとり、近くに聳える岳ノ山はどんどん遠ざかっていきます。

 

尾根は数か所ほど間違えやすいところがありましたが地図を確認して注意しながら進みました。

 

相変わらず広めの尾根にブナ林は気持ちが良いです。

 

時には目を見張るほどのブナの大木があり、まるで深山に彷徨い込んでいるようです。

 

人里近く、郷の暮らしの痕跡が感じられるほどのこの場所にこれほどの自然が残っているのには驚かされました。

 

いくつか登り下りを繰り返し、やがて再び林道に下りますが杉の植林の管理用林道のようで、今は雪に埋め尽くされていて良く見ることはできませんが雪解けをしても車を乗り入れることは困難ではないかと思います。

 

 

 

杉の植林帯を抜けると目の前には大きな岳ノ山が聳えております。

 

尾根は急なものの俎板状ではありません「これなら登れそうだ。」

 

最後の登りに大汗をかきながら岳ノ山の肩に出ましたが、双耳峰の岳ノ山の山頂はまだずっと奥です。

 

ラッセルも深くなってきましたが「もうちょっと」と自分に言い聞かせ何とか山頂に立つことができました。

 

山頂は狭く、雪があって分かりませんがおそらく岩峰なのでしょう、痩せた大地でも根を下ろすことが出来る五葉松が点在しております。

 

山頂からの展望はすこぶる良く、朝日連峰の主稜線が何ものにも遮られることなく、その白い峰々が太陽に照らし出されて輝いております。

 

その前衛には大きな日倉山や石黒山、駒ヶ岳など奥三面の秘境の峰々が圧倒的な迫力で聳えております。

 

すぐ目の前に大きな鰈山が、五葉松の隙間からは葡萄山塊が大きな壁となって立ちはだかっております。

 

 

 

今回登った人里近くに聳えるこの二つの山ですが、どちらの山も下界からは良く見えません。

 

天井山といった山名を考えると、普通は下界を見下ろせるようなお城が築かれているようなことを連想しますが、山頂からは葡萄集落のごく一部が見えるだけでしたのでかつてのお城山だったというわけではなさそうです。

 

結局、いろいろ調べましたがどうして天井山と言う名前なのかはまったく分かりませんでした。

 

岳ノ山についても山名はまるで「山の中の山」といった感じで、確かにその鋭鋒は姿形が綺麗だと思います。

 

でもなぜ岳ノ山と言う名前になったのかは調べてもまったく分かりませんでした。

 

ただ近くには葡萄集落があり、葡萄とは武道から転化したとされており、阿部氏討伐を終え、陸奥国から帰る際に源義家が立ち寄ったことに因んだ地名とされています。

 

このことからして、もしかすると“たけ”は武だったものがいつのまにか岳に変わったなんてことも考えらえそうです。

 

 

 

いずれにしても登山対象としては扱われていないこの山々でありますが、美しいブナ林と眺望の良い山頂は、大変に申し訳ないのだが先日登ってきた日本百名山にも選出されている秩父の名山と言われる二つの峰々よりも展望が良く、気持ちが癒される静けさの中、まるで深山にトリップしたような感覚の幽玄なブナ林など、こちらの山の方がはるかに名山だと感じて山頂をあとにしました。

 

 

 

ひとつだけ今回の山行で非常に残念だったことは「近所の山へちょっと足慣らし」ということでカメラを携帯していなかったことを大変に悔やんでいます。

 

 

 

コースタイム

 

国道7号線尾根取付きヶ所 40分 天井山 1時間40分 岳ノ山 1時間30分 国道7号線尾根取付きヶ所