雨の頭布山

 

平成27年4月5日

 

 

 

ここ数年の間に特に年配の女性が多く入会されていて会の山行は里山を中心としたハイキング山行を余儀なくされてしまっている、まるでツアー登山山岳会と化している、といったようなお話をいろいろな方からよく聞きます。

 

 

 

人が多いということは活気があり、ある意味楽しいのでしょうけれど山行内容に言及するとツアー山行のようであるということは果たしてこれでいいものかどうか皆さん疑問に思っておられるようです。

 

 

 

私の所属する山岳会については長い歴史と伝統のある山岳会で、その山行内容も非常に厳しいものであり、正直なところ敷居が高くて初心者では気軽に入会しにくいといった風潮が世に出回っているものではないかと思います。

 

そんなこともあって初心者レベルの新規入会者はなかなかおられないようです。

 

 

 

それはそれでレベルの維持と言った点では決して悪いことではないと思うのですが、やはり若い方の入会を待ち望んでいたことは確かであったのではないかと思います。

 

そもそも以前の下越山岳会であれば確かに厳しい山行をする山岳会であったものと思いますが、今となってはまったくそんなことはありません。

 

皆さん大変な誤解をされているように思います。

 

 

 

そんな折、この1年間くらいの間に少数ではありますが下越山岳会に若い女性が入会してくださいました。

 

 

 

私の場合は高桑信一さんの著作である山小屋からの贈り物と言う本の中で様々なことが暴露され、世間的には私が女好きだということになっているわけですが、そりゃあそんな私のことですから若い女性の入会を嬉しく思うのは当たり前のことであります。

 

 

 

しかし私以上に喜んだのが山岳会のお爺さんたちでした。

 

会の先輩をつかまえてお爺さんなんて言い方は失礼なのかもしれませんけれど、女性会員に対応している姿はどこにでもいる単なるお爺さんにしか見えません。

 

それは男性会員が入会した時とは天と地の差、本当に正直な物です。

 

入会した若い女性はいつもお爺さんたちにチヤホヤされ、自宅に招かれたり、山では競い合って手取り足取り指導されている姿を目にします。

 

お爺さんが女性会員を指導している時などは床に着くのではないかと思うほど鼻の下が長くなっており、それはまるで滑り台のようで子供が遊べるのではないかと思うほどです。

 

確かに若い人を大事にして育てようとする気持ちも大いにあるのでしょうけれど、あの過度な対応、あまりの熱狂ぶりに「どうかしている、目を覚ませ!」なんて思うことも度々です。

 

 

 

確かに山好きな男は女好きな人が多いようです、私の場合は高桑さんの本でジゴロと称されましたが、実はそんなお爺さんたちの方がよっぽどジゴロなのではないでしょうか。

 

私はたまたま本で明るみになってしまいましたが、お爺さんたちに限らず山岳会関連の人たちの中には私以上に女好きな方はたくさん居られるように思います。

 

 

 

というようなことでいろいろ書いてしまいましたが、これでは何だか高桑さんの本を読まれた方に対して言い訳や反論を言っていることになるのでこの話はもう止めとこうと思います。

 

 

 

ただ現状の下越山岳会は以前のような厳しい山行はほぼなくなり、お爺さんたちが優しく指導してくれるので、(それについては女性に限定されますし、特にそれが若ければ歓迎される傾向にあろうかと思われます)とにかく楽しく山登りができると思うので興味のある方は安心して遊びに来てください、ということをお伝えしておこうかと思います。

 

 

 

 

 

主題の頭布山に関してですが、女川山塊の最高峰であり、結構登りたがる方も多く居られるようです。

 

私自身は過去に二度登っておりますが、どこから登っても非常に厳しいところであります。

 

まずは何故三度、しかも雨の中の頭布山に向かうことになったかをお話しようと思います。

 

 

 

 

 

去年の暮れに厳冬期の飯豊から無事に下山した私は疲れと安堵などから抜け殻のようになっておりました。

 

 

 

しばらく山に登らず、長年溜まった登山疲れを癒そうと療養期間を過ごしておりました。

 

しかしそんな日々は私にとって決して療養とはならず、体は運動不足になり糖尿病も悪化し体重も増える一方で、冬の北俣登頂成功の余波は意外なところに現れ始めました。

 

 

 

このままでは良くないと思い、1月の山岳会主催の山行に参加することにしました。

 

行先は日本国で、その会山行中にゆきみの会の佐藤さんと言う方に出会ったのが今回の頭布山行への布石となったのでありました。

 

まず先言っておきますが佐藤さんは男ですのでくれぐれも誤解しないでください。

 

 

 

日本国で会った佐藤さんは後日私のホームページを見てくれたようで数日後にメールをいただき、数回のメールのやりとりの末に今回の頭布山行を実現させるに至りました。

 

 

 

本来のところ私は単独でしか山には行きませんし、人と山へ行く場合でもよっぽど気心の知れた人としか山へは行きません。(女性の場合は別ですが)

 

今回の山行は私にとって異例中の異例です。

 

 

 

佐藤さんがどんな山登りをしてどのくらいの山に登れるものか、頭布山行は可能なものかは数度のメールで判断するにはそれほど難しいものではありませんでした。

 

しかも本来のところ初めて一緒に行く山がいきなり頭布山のような難しい山ということは有り得ない話なのですが、佐藤さんは登山道の無い山歩きには慣れていないように感じ、教えるなんてことは私程度の者にはできませんが一緒に行って少しでも安全に登山道の無い山歩きの今後の参考になればいいと思ったのと、それに何よりも彼の熱心さに打たれ、それではだめだったら途中で引き返してもいいからとにかく行ってみようという気に私はさせられたのでした。

 

 

 

それに最近の人はクライミングとかトレランとか横文字に憧れるようで、どうしてもそちらの方向に向かいがちのようです。

 

確かにロープワークとかができると「この人はできるな」なんて勘違いしてしまいますし「俺はクライマーだ」なんて言うと凄く格好良い人のように感じてしまいます。

 

クライミングやトレラン自体は別にそれはそれで良いと思いますが、ただ単に横文字に憧れて何もわからず安易にそちらに行ってしまうような精神の持ち主の人は嫌いです。

 

 

 

ところが彼は横文字のまったく当てはまらない登山道の無い山へ興味を持たれているようで、いまどき珍しいと思ったことも今回の山行に至った理由です。

 

 

 

道の無い山登りは若い方には人気が無いと思いますが彼のように興味を持たれる方がおられるということに私は少し嬉しくなりました。

 

道の無い山は人によっては変な山であったり、妙な山であるのかもしれませんが少しずつでもホームページなどを通して今後とも発信していきたいなんて思いました。

 

 

 

今回は他にも下越山岳会で行きたがっている人がおられるようなので「多分、行く人はいないだろうなー」なんて思いながらも一応声を掛けてみましたが悪天と言うこともあってか結果は案の定でした。

 

こういった特殊な山域は人数が少なければ少ないほど有利です。

 

 

 

さて今回のルートについてですが、非常に難しい頭布山ルートの中で初めての同行する方がいるということもあり、比較的登りやすいところを選びました。

 

いくら登りやすいとは言え、かなりの距離を歩かなければならず簡単ではないというは確かです。

 

それからこのルートをここで公表すると安易に入山者する人が増える可能性があるのでここでは詳しく書かないことにします。

 

 

 

地図で見るとうんざりするほど距離があるこのルートですが、ここはこの山域特有の悪い場所がまったくありません。

 

生憎の天候で行くかどうか迷いましたが、ここも熱心な佐藤さんに押し切られ、危険を感じるほどの悪天候でなかったということもあり、とにかく今回は道無き山の歩き方を少しでも見て頂いて今後の自分の山行に繋げてほしいと思い、頭布山入口へと向かいました。

 

 

 

山行当日、一緒に歩いてすぐに思った通り体力は十分にあり、その点心配はないと思いました。

 

そして黙々と歩くこと4時間半、まったく問題なく無事に登頂することが出来ました。

 

 

 

山頂には小さな頭布山の標識が木に括り付けられております、去年訪れた時は無かったのに・・・、「誰がこんな物を取り付けたのだろう?」。

 

矢筈岳の標柱ほど不快な物ではありませんが、やはりここは人跡稀な秘境であります、できればこういうことはやめてほしいものです。

 

今回はそっとしておきましたが、ペンチひとつあれば簡単に外せそうです。

 

いつか次に訪れた時には誰かに外されていることを期待して山頂をあとにしました。

 

 

 

そういえばこの時に佐藤さんから頭布山にもガイド山行があるということを聞きました。

 

こんな奥深い山だというのに金儲けの対象にされているということで、大変にがっかりしました。

 

こんなに静かに聳える頭布山まで売り物にするような輩がいることを知り、驚いたと同時にとても残念に思います。

 

ここは高額なお金を払って他人に連れてきてもらうようなところではありません、自分自身が努力しなければ登頂は難しいところです。

 

 

 

取り付けられた標識やガイド登山に象徴されるように頭布山もこのままグローバル化を辿って行くのでしょうか?

 

数少ない安息の地はこのままであってほしいと強く願います。

 

 

 

そして徐々に強くなる雨の中無事に下山。

 

帰りも行きと同じく4時間半を費やしました。

 

 

 

三度目の頭布山行も無事に終わり、相変わらず頭布山はとても素晴らしい山でした。

 

今回このルートを歩いてみて比較的登りやすいとは言え、やはり簡単ではないと感じました。

 

軽い気持ちで訪れるようなところではなく、それなりに覚悟して臨まなければならないところです。

 

正直なところ申し訳ありませんが、下越山岳会の人たちが不参加で良かったと思いました。

 

どこの山岳会も概ね厳しい山行が無くなってきている中、私が所属する山岳会の山行についても高齢化ということもあってか年々厳しさが薄れていて、若い女性の入会により益々軟派な山行化が進んでいるように思われます。

 

結果的に先鋭的な山行をされる方がいなくなっているように感じます。

 

でも私としては私の山行に対して硬派を貫いていきたいです。

 

ジゴロと称され軟派な男だと思われている私ですが、実はこう見えても山に対してはとても硬派なんですよ。

 

どんなに可愛い女性に頼まれても自分の山行スタイルを変えてまで連れて行くようなことはしません・・・、もしかして、多分。

 

うーん、でもやっぱりちょっとくらいなら楽しい山登りもいいかなー・・・。

 

 

 

今後、山岳会がどのような方向に進んでいくのか私には分かりません。

 

幸いなことに私は今のところ一人でどこの山へでも行くことができます。

 

山岳会がたとえどのような方向に進んでも私はできる限り変わらないままでいたいと思っております。