新保岳~登立山

 

平成27年3月8日

 

 

 

先日の土曜日、会社で健康診断が実施された。

 

胃の検診ではバリウムを飲むのですが排泄しにくいので検診後に下剤を飲むことになります。

 

検診は午前中に終わり午後からは飲んだ下剤が効きはじめいつも大変なことになります。

 

これは40歳を過ぎると必ず受けなければならないことで毎年のこととはいうもののとても苦痛に感じている次第です。 

 

会社のトイレは一つしかないのに従業員は30人近くいるので、トイレ待ちの行列ができ、皆さんたれそうになっているものと思われます。

 

 

 

今回の私の場合はもちろんバリウムと下剤を飲みましたが、とにかく忙しくてその日の午後からの作業の進み具合によってもしかしたら翌日の日曜日ももしかしたら休日出勤しなければならない可能性がありました。

 

ところが天気予報を見ると日曜日は晴れです、私は午後から必死で仕事をしました。 

 

この日の午後は外回りの作業をしていて、そこの近くにトイレはありません。

 

こんなときに限って素晴らしく下剤が効きました、薬効あらたかです。 

 

歩いただけで漏れそうになるところを何とか内股で頑張りながら歯をくいしばって作業をしますが、歯をくいしばればくいしばるほど漏れそうになる。

 

歯をくいしばらなければ作業ははかどらない、あまりの苦しさに私の肛門は今にも爆発しそうだ。

 

遠くコンビニまで行ってトイレを借りるがすぐにまたあの予兆はやってくる。

 

しばらく我慢していると少し治まるものの再び激しさを増してやってくる。

 

まるで荒波の如く寄せては返す、が何度も繰り返えされ私は必至で耐えるしかありませんでした。

 

すぐ近くには川が流れていて、下流側には数人の釣り人の姿が見えます。

 

そこで私は上流側で影に隠れてこっそり用を済まそうと思って河原にむかった。

 

するとそこにはなんと先客が居るではないか、それはうちの会社の従業員でした。

 

ここは男同士並んで・・・、と思ったが小ならいざしらず大の方では無理がある。

 

結局、私は最後まで耐え抜いて午後からの作業を終えました。

 

そしてそんな努力の甲斐あって、無事に次の日は休めることが決まりました。

 

ただ、必死で作業をしたため猛烈に疲労しておりました、果たして明日は山に登れるのか、自分でも心配するほど疲れました。

 

明日の行先は決めています、とにもかくにも早く帰って準備をすませました。

 

 

 

行先は葡萄山塊、ここは私が近年足繁く通っている女川山塊を歩きやすくしたような感じで、適当に難しさや面白さ、それから原始性があり、静かな心休まるところでもあります。

 

この葡萄山塊自体はとても良いところでありますが、私は女川山塊へ向かう足慣らし的な意味で登るといった感じであります。

 

今回は登山道のある新保岳から隣の登立山というところを縦走して下山するルートを歩くことにしました。

 

尾根伝いにぐるっと一周できるので車の回収も問題がありません。

 

 

 

この時期は雪があるのでその雪を利用して道の無い山に行こうとしているわけですが、その代り集落から先は除雪されていないので歩いて行かなければなりません、これは雪国の宿命でしょう。

 

尾根の取付点までは塩野町集落の国道から林道を延々と歩かなければなりません。

 

そんな折、先日のこと下越山岳会の渡部哲明さんから山スキー靴を譲っていただきました。

 

せっかくなので私はスキー板とスキンを買い、今回の林道歩きに使用してみるつもりでおりました。

 

スキーを履くのは3年ぶりとなった今回、昨日の下剤がまだ効いている中での挑戦でした。

 

 

 

スキー歩行に関しては以前に何度か経験があるので大丈夫だろうと思っていたのですが、意外に大変で、なかなか苦労しました。

 

思いのほかすいすいと滑ることができず、とにかく靴が重くて非常に疲れ、途中何度か休憩をしたほどでした。

 

林道歩きの時間を短縮しようとの目論見でしたがワカンで歩くと40分ほどのところ入山口で靴をスキー靴に履き替えてスキーからワカンに交換した時間を入れると1時間以上もかかってしまいました。

 

おそらく履き替え時間がないとしてもワカンで歩いた方が早かったと思います。

 

スキー歩行は練習が必要のようです。 

 

ワカンに履き替え、林道から逸れて旧登山口の尾根に取付くと急な登りがしばらく続きますが、それほど歩きにくさはありません。

 

やがて再び林道と合流すると、ここが新保岳への新しい登山口となります。

 

ここからさらに登り続けるとほどなく急な登りは終わり、鳥海山や月山や朝日連峰が見えるようになり新保岳山頂に至ります。

 

山頂からは日本海がすぐ下に見え、佐渡や粟島が大きく海に浮かんでおります。

 

こんなに海に近いのに見事なブナ林に心が安らぎます。 

 

私はあまり休憩しないのですが、ここでザックを下ろし少しペットボトルのお茶を飲みました、するとこれが見事に大当たり。

 

昨日から柔らかくなった腹が水分を含むことによって流動性が増して私の下腹部を刺激します、再び大きな波が打ち寄せては引いていく。

 

しかもここでティッシュを忘れたことに気が付きました。「しまった!」そう思ってももうどうにもなりません。

 

山はまだ冬ですので木々に葉っぱも付いていません。

 

笹はありますがこれは切れます、痔にもよくありません。

 

ここからギュッと尻の筋肉を絞めて歩くほか手立てはありませんでした。 

 

幸いなことにここからはしばらく新保岳からの下りが続くので歯を食いしばって歩く必要はありません。

 

山は下りますが腹は下ってはいけません、尻の両脇に力を入れながら尚且つ尻の中央部は力を入れないように登立山に向かって歩きました、微妙な力加減です。

 

 

 

最低鞍部まで下ると再び車道と合流します。

 

ここから登り下りを繰り返しながら徐々に高度を上げていき広い登立山山頂に着きました。

 

それにしても素晴らしいブナ林です。

 

吹きすさぶ海からの寒風がきっとこの奇怪な形をしたブナの大木を育てたのでしょう、雪国ならではの景観です。

 

とても心休まるこの空間を冒頭では足慣らし程度で訪れると書いてしまいましたが本当のところ足慣らし程度で来るにはもったいないところでありまして、葡萄山塊は女川山塊とはまた違った素晴らしい魅力ある山域です。 

 

登立山の閑静なブナ林にすっかり魅了された私は腹の具合が治まっていることをすっかり忘れておりました。

 

登立山からの下山路は急な登り下りに加えて時折歩きにくい痩せ尾根が出現したりで、結構苦労しながら林道へと戻りました。 

 

林道からは再び苦手なスキー歩行が待ち構えております。

 

しかしすっかり腹は固まり微妙な尻の力加減は不要でしたので、何とか無事に漏れなく車に到着することができました。

 

 

 

新保岳の登山口は塩野町という集落にあります。

 

塩野町については旧朝日村の小揚集落から才ノ神峠、柳生戸集落、大峠を通って烏帽子岩脇を抜けて樋ノ沢から小国の荒沢集落に至る塩の道の発着点ということが地名の由来だと思われます。

 

その塩野町に聳える新保岳はというと保とは開拓地や開墾地という意味で、新保とは郷庄以降に新規開拓された豪族兼併地というところなのだそうで、よく新保という地名を耳にしますが新保という山名は珍しいようです。

 

山名由来に関しては詳しいことは分かりませんが新保岳の海側に浜新保と言う集落があり、そこはその新規開拓地であろうと思われますが、山名はそこからきているのではと推測されます。

 

山岳信仰については痕跡がほとんどないようでしたが、林道途中の山腹には二つの神社が祀られておりました。

 

 

 

登立山に関しては誰がどのような理由で名付けたのか資料がなく、まったくのお手上げです。

 

日本国内ほとんどの山名が網羅されている日本山名辞典にも掲載されていなかったほどですからある意味非常に珍しい山名であると思います。 

 

古い文献には戸立山とされていて、これは朝日連峰の大鳥池から以東岳に向かう途中に登山道から少し外れたピークに同じ山名の山があります。

 

戸立とは屏風のことを言い、屏風や衝立のように聳えた山と言うことになりますがこの葡萄山塊の登立山は果たしてどうなのだろうか?

 

 

 

荒れ狂う冬の日本海から吹きすさぶ季節風にさらされて大きく変形したブナの大木が印象的なこの山は、とても静かなブナ林が続く葡萄の山塊の中でも特に静けさを保っているところで、この登立山にはぜひまた山頂に登り立ちたいと思いました。

 

 

 

コースタイム

 

国道 1時間 尾根取付点 2時間30分 新保岳 1時間10分 登立山 3時間30分 林道 50分 国道