葡萄山

 

平成26年2月27日

 

 

 

1年ほど前、会社のパソコンが入れ替えられ、それまでノートパソコンだったものがデスクトップになり画面が26インチといった大画面になった。

 

私はCADという図面を書くソフトをパソコンに導入しており大画面になったことで好都合になりました。

 

ところがそれからというもの目の疲れが激しくなるという弊害が発生し、これは明らかにパソコンの大画面導入の影響によるものでした。

 

ここ最近は特に目がしょぼしょぼして辛いので、たまに山でも行って景色を眺めて目の疲れを軽減したいところです。

 

 

 

「目に良い山はどこだろう?」ブルーベリーが自生している山なんて聞いたことがない。

 

目の保養、あるいは治療が出来そうな山となると近くには関川村の葡萄鼻山、村上市(旧朝日村)の葡萄山などがあります。

 

そこで今回は村上市の葡萄山へ行こうと考えました。

 

「きっと山頂に登って神様にお祈りすれば目は良くなる」私はそう信じました、いわゆる登拝というやつです。

 

 

 

この葡萄山は登山道が無く、ちょうどこの時期にはおあつらえ向きな山です。

 

どのルートから登ったらいいのか地図を見て考えなければなりませんが、すぐ下には葡萄スキー場があり、葡萄山に登ったことがあるという大半の人はスキー場からの往復で訪れているようです。

 

しかしそれでは面白くありません、スキー場に影響を受けていない別ルートから登りたいと思いますが、まずは藪山のパイオニアである羽田さんと亀山さんの記録を見ることから始めます。

 

できることなら誰も登っていないような、あるいはせめて記録のないところを登りたいと考え、彼らはどこから登っているのかを調べて参考にし、彼らとは別ルートを探して登るところを決めます。

 

地図を眺めていると、この葡萄山塊の主峰はやはり唯一の登山道があり、古くから登山者に親しまれてきた新保岳であろうと推測できますが、その新保岳を登って葡萄山まで縦走するのが一番魅力的な登り方に思えますし、彼らもそのルートを辿っているようです、亀山さんは他ルートも歩いておられるようですが・・・。

 

時間があればやはり私もこの葡萄山塊を縦走したいのですが、休日はいつも天気が悪くなるので平日の昼休みにでも登るしか手立てが無く、今回も時間に追われて葡萄山を目指すことになりました。

 

時間の都合と車の問題などから縦走はいつかの機会にということで、今回は記録がまったく無い葡萄山の北東側に派生しているいくつかの尾根のひとつを選んで登ってみました。

 

 

 

2月の後半、長く続いた寒さが緩みはじめて春の兆しが見え隠れするようになってきました。

 

すると空気は霞がかかるようになり、特に晴天となった2月26日と27日の新潟は外出注意報が出るほど大陸からPM2.5が多く飛来して、空は真っ白になっておりました。

 

27日は徐々に天候が崩れ、PM2.5の濃度は薄くなるとの予報でした。

 

天気は曇り空へと変わりはじめていましたが、この時期としてはまあまあの天気、PM2.5も薄くなるというので、まずまずの登山日和だと思います。

 

平日でありますが社長には「パソコンの大画面のせいで目が疲れる、山に行って目を休ませなければならない」と言って概ね昼休みの時間に予め目星をつけておいた登山口へと車を走らせました。

 

時刻は10時40分、昼休みにはほんの少し早いような気もしますが、目の疲れをとるためであり仕方のないことなのであります。

 

 

 

登り始めは急なうえに痩せ尾根で、さらにツバキやツツジなどの常緑広葉樹と背の低い灌木が多く、尾根が塞がれ結構なうるさい藪の登りが続きました。

 

しばらく登るとやがて地図を見ながら懸念していた岩場が現れますが、それほどの物ではなく簡単に越えることができ、ここ付近からようやく尾根が広がり少しなだらかになりました。

 

藪は相変わらずうるさいのですが、徐々にブナの木々も見え始めました。

 

そして大きな尾根と交わる頃に藪は無くなって閑静なブナ林へと様相は変わりました。

 

ブナ林に入ると、そこはまるで大きな山の懐に抱かれているような安堵の気持ちにさせられ、心は束の間の安らぎをおぼえます。

 

いつものように時間を気にしながら息を切らし急ぎ足で登っていると、目の前には静かなブナ林が広がり、思わず足を止めてしまいます。

 

誰もいないひっそりと静まり返ったブナ林の中では五感が研ぎ澄まされ、ゆっくりと自然を感じます。

 

はりつめた空気と風の音、木々の息吹が心に響くだけ。

 

できればこのままいつまでも立ち止まって自然を感じていたいと思うのですが、時間がありません、欲求を振り切って再び先を急ぎ、そしてあまり広くない山頂へと辿り着くことができました。

 

 

 

山頂から左側はるか下にスキー場が見えます、そして山頂のすぐ右下には雪で埋もれているものの明らかに車道が走っておりました、こんなところにまで人工物があるのは残念。

 

そしてその車道に沿って最近の物と思われるワカンの足跡が続いております。

 

確かに地図を見ると林道が葡萄山山頂まで延びておりますが、おそらく廃道になっているのだろうと思っておりました、真偽のほどを確かめるために雪解け後に訪れてみる必要があります。

 

それにしても車道に付けられたワカンのトレースは目に毒です、これでは目の保養になりません、パソコンで疲れ切った目は益々疲れてしまいました。

 

 

 

葡萄と言う地名は日本全国に多くあるそうですが、その由来は様々だそうで、実際に山葡萄が多く自生しているところもあるそうですし、窪地を古語でウトウとかウトと言い、それが転化して葡萄になったというところもあるそうです。

 

この葡萄山については源頼家が奥州遠征の帰りに立ち寄り、あまった弓矢で神社の屋根を修理したと云われている矢作神社があり、そこから武道という言葉が起因し、葡萄に転化されたのではないかとされているようです。

 

 

 

新潟県には川内山塊や海谷山塊をはじめとした、開発されていない山岳地域が多くあります。

 

しかし川内山塊や海谷山塊のように全国的に名が知られると多くの人たちが訪れるようになってしまいます。

 

この葡萄山塊は小規模の山塊で、登山道は新保岳にしかつけられておらず、新保岳以外はあまり名が知られておらず、興味をしめす人はほとんどいないようです。

 

確かに車道はありましたがそれは葡萄山付近だけのことであり、山域すべてに車道があるというわけではありません。

 

周囲には奥三面の奥深い山々が延々と連なりを見せ、そしてすぐ近くに日本海の荒々しい姿があります。

 

深い山中にもかかわらず海が近く、厳しい気象条件にさらされ続けている葡萄山地は川内山塊や海谷山塊とはまた違った秘境の魅力が多くあるように感じました。

 

 

 

無事に下山して、身支度を登山用の作業着から仕事用の作業着にチェンジしているとき、地元の方と思われる犬を連れて通り過ぎていく女性の後ろ姿がチラッと見えました、ここから民家があるところまでは結構遠く、随分と長い距離を散歩しておられるようです。

 

長い黒髪をなびかせながら歩く後ろ姿はとても清楚で麗しくそれでいてどこか妖艶に感じました。

 

私はあの後ろ姿を見たことによりようやく少しでありますが目の保養をすることができました。

 

 

 

そして作業ズボンを履きかえようと車の傍らでパンツ1枚になっている時ちょうどさっきの女性が再び現れ、ニコニコしながら軽く会釈をされて行かれました。

 

後ろ姿をチラリと拝見したときの心ときめく思いは脆くも崩れてしまいまいましたが、葡萄山山頂で叶わなかった目の保養は、下山してから後ろ姿だけ美人の方に出会った時、明らかにその時は目は安らいでおりました。

 

私にとって目の治療や保養をするには、山へ登拝に行くよりも街に繰り出して美人のお姉さんでも眺めている方がよっぽど薬効あらたかのようです。