正月の飯豊荷上げ

1027日 西俣尾根 

 

暑かった長い夏がようやく終わり、山の木々が色付きを増し冬支度を始める頃になると私の心はざわざわと落ち着かなくなる日々が始まります。

 

今年もまた正月の飯豊が近づいてきました。

去年は幸運にも北俣岳単独登頂を果たすことができ、次なる正月の山はどこにしようかいろいろ自分の気持ちを模索していた一年でありました。

 

生ある者が行ってはいけない死の世界で、去年は二人の人と出会いました、そんな過酷な禁断の地でほんの僅かではありましたが行動を共にした人と仲間意識が生まれることは不思議ではありません。

彼ら新潟山岳会の二人とは「来年一緒に大日岳目指しましょう」と会話をするまでに至りました。

 

そして夏が過ぎ、正月山行に向け準備を始めなければならなくなったときに、「本当に彼らと大日岳を目指すのか?」、「本当に自分の行きたいところはどこなのだろうか?」まだ自分自身気持ちの整理がついていない状況でした。

彼らは仲間であり仲間と一緒に山へ行くことはとても大切なことだと思いますが、何なのかよく分かりませんが自分の中でどこか納得できずにおりました。

 

そこでまずは人とのことを考えずに自分のことだけを考えてみることにしました、「自分はいったい何処に行きたいのだろう?」

もちろん正月の大日岳は必ずいつか行きたいところであります、しかし理由はいろいろありますが、自分のなかでは今は時期尚早のように思えているところです。

一昨年は飯豊本山に登頂をしていたので今回は飯豊から離れて朝日連峰に行こうかとも考えました。

あれこれ迷い自問自答した末、最終的に再び西俣ルートで北俣岳を目指すことが、自分が今一番やりたいことなのだと気が付くに至りました。

 

去年はせっかく北俣岳に登頂したのに、あれは天候に恵まれてたまたま登頂できただけにすぎないと考えると、終わりよければすべてよしという考えでは進歩が無い。

登頂できたときはなぜ登頂できたのか、敗退したときと同様に分析すべきであろうかと思いますが、去年の登頂やもしかして一昨年の飯豊本山の登頂についても何故無事に登頂できたのか分からない点が自分の中でいくつかありました。

 

今まではただ単に運に恵まれただけの登頂かもしれません、今回はそれを確かめるために去年と同じルートで去年と同様に単独で向かいたいと思いました。

それから仲間と苦楽を共にすることはとてもいいことだと思いますが、こんな過酷な登山はやはり一人がいい。

過酷だからこそ仲間と行くべきだという声も聞こえてきそうですが、数人で行くのと一人で行くのとでは大違い、うまく言えませんが単独行の場合は経験できることや山で得られることは複数名で言った場合と比べて雲泥の差があるように思えます。

確かにいろいろな人と山へ行くことは別な意味で勉強になることはあろうかと思いますが…。

 

いずれにしてもそのような理由で、とにかく厳冬期の飯豊を自分自身のものにするためにおさらい登山ということで今回も挑戦することにしました。

 

それからもうひとつ大きな理由がありまして…、去年登頂したにも関わらずカメラが凍ってしまい写真を撮ることができませんでした。

あの驚異的な厳冬期の情景を心に焼き付けるだけではもったいない、あれから下山したあとで、気密性と堅牢性が良さそうなカメラを2台も購入しました、今度はちゃんと写真を撮ってきて帰りたいと思います。

 

新潟山岳会の御二方については一緒に行かないにしても仲間です、そんな仲間にはメールで丁重に事の説明を申し上げ、再び単独行の運びとなりました。

彼らの正月はどこへ行くのか現時点で情報は入ってきておりませんが、どこへ行くにしろお互い素晴らしい正月山行になることをお祈りいたしております。

 

荷造りに関しては去年のデーターをそのまま引用し、去年余った分を考慮してやや少なめの荷物に仕上げることができました。

 

荷上げ日は雪が積もる前に適当な日を選んで、できればキノコが採れそうな時期に行きたいと思っていて、天気具合からしてちょっと早いけれど1027日あたりが妥当と判断して実行に移りました。

 

荷上げ場所は去年は西俣峰と大ドミの少し先のベースキャンプ地にしましたが、今年は西俣をやめ十文字池の少し先のあたりの木に荷上げをし、大ドミの少し先のベースキャンプ地についてはいつもと同じ木に荷上げをしました。

 

去年のあのラッセルを考えると初日に西俣峰まで到達できるかどうか一抹の不安があったことと、数人の方がラッセルサポートとして協力してくださった去年と違って2年目となる単独挑戦は周囲でも熱がやや冷め加減だろうと判断し、サポート隊はのぞめないかもしれないと考え、安全最優先で十文字池付近に荷上げをすることにしました。

 

もし少雪だったり去年のように複数名のサポート協力が得られるようなら十文字池から西俣峰まで荷上げ品を担ぎ上げればいいという計画にしました。

もちろんサポートしてくださる方が居られればそれにこしたことはなく大歓迎であります。

当然、義務としても山岳会の方々には正月山行計画の話をしてみるつもりですが、興味のある方は是非サポートをお願いしたいと思います。

ただしサポート在りきの計画をしていたのではどうしようもない、私としてはすべて一人でという計画を立てたことは言うまでもありません。

 

そして荷上げは無事に終わり、キノコを採りながらの下山となりましたが、今年はどうしたことかあまり出ていません。

今回の収穫はナメコ少々、クリタケ少々、ナラタケちょっと多め、ブナハリタケさらにちょっと多めという結果になりました。

全体的に収穫高は乏しく、ひとつの目的である荷上げは無事に終わりましたが、最大の目的であるキノコについては目標達成とは程遠い結果となりました。

ちゃんとキノコ籠を持っていったときは必ずと言っていいほど採れません、何も準備しないで行くといっぱい採れます、なんでだろう?

今回のキノコ採取に関しては完敗です、進歩あるのみ!よく分析して次回のキノコ山行に繋げなければならないと強い思いで下山しました。

 

追記

またしてもそんなことで今年の正月も飯豊に向かいます。

いろいろな方に御心配や迷惑をかけてしまうことになりますが、どうか面倒を見てやってください。

少ないとはいうものの数名の心配してくださる方も居りますし、周囲の方々へ御迷惑は最小限にしなければならないということは重々承知致している次第にて御座います。

とにかく無理はせず危険と思ったらすぐに撤退すること、五体満足で帰ること、そのことを心掛けて入山したいと思います。