要害山~箱岩峠

平成25228

 

加治山に伝わる伝説 七葉の松

加治山に七葉の松が一本あるそうです。むかし戦いに負けた殿様がたくさんの宝物をその松の根元に埋めて「心の正しい美しい人に、これを与えたまえ。」と言って切腹しました。その話は誰からともなく言い伝えられて、人々は七葉の松を求めてわれもわれもと探しましたが、誰も見つけることはできませんでした。

ところが、日頃から正直で親孝行で働き者の男がある日、山へ木を伐りに行き、いっぷくしながら「いい天気だなあ。」と、なにげなく空を見上げると、緑がとくに美しい、まるで光るような松の枝が目にとまりました。

「これは不思議な松だ。」と、よく見るとそれは七葉の松でした。男はこれが昔から言い伝えられている七葉の松だと、その美しい松に見とれていましたが、人間の悲しさで、「よし、せっかく俺にあたわった七葉の松、掘って、宝を。」と、まっしぐらに鍬を取りに家に駆けおりました。さて、息をきらしてもとの場所へ戻ってみるとその松が見あたりません。いくら探してもとうとう二度とその松を見つけることができませんでした。「欲を出したばっかりに。」と、男はなんども悔やみましたが、もうあとのまつりでした。今でも、その七葉の松は加治山のどこかにあるということです。

(ふるさとしばた より)

上記の七葉の松の物語は私の母校に伝わる伝説です、ちなみに松の木の葉は普通五枚だそうです。

 

 

私が子供の頃通った小学校は新発田市立七葉小学校という学校で、校舎のすぐ裏手には小さな山が聳えております。

その山は地元の人たちに加治山と言われ親しまれていて、正式名称を要害山と言います。かつては加治城という城があったそうですが、戦で火を放たれ城は焼け落ちてしまい、その時に米蔵に火が燃え移り辺り一面に焼き米が埋もれたそうです。

 

子供の頃、私たちは加治山へ遊びに行きトンボを追いかけたり、山椒魚を採ったり、加治城の焼き米を採りに行ったり、伝説の七葉の松を探す冒険に行ったりして、そんな加治山は私の幼き日の思い出がいっぱい詰まっている山なのであります。

それが麓の集落で熊の目撃が多発するようになり、それ以来加治山へ遊びに行く子供は居なくなってしまいました。

子供たちの遊び場が公園に移るといつしか山は荒れ果て、熊が出る山ということで誰も見向きしなくなってしまいました。

 

あれから数十年の月日が流れ、胎内市と加治川村で櫛形山脈縦走路が開通するも櫛形山脈末端に位置する加治山まで縦走路は伸びずに相変わらず荒れ放題、しかも近年でも熊の目撃情報は絶えず、未だ近寄る人は稀なところとなっているようです。

 

登山口には地元の人たちに加治神社と呼ばれている神社があり、これは藤戸神社という正式な名称があるそうですが、加治城主の佐々木氏が岡山県倉敷市藤戸での藤戸合戦の戦功を記念して藤戸神社と名付けられたとされているようです。

 

加治山、正式名称要害山はかつて城があった山のことをそう呼ぶのだそうですが調べてみると新発田市内には要害山といわれている山が3ヶ所もありました。そもそも要害山とは高台にある見晴らしのいいところで周囲が複雑に入り組んでいて味方には要で敵には害というところからきているそうです。

 

この加治城があった要害山はこの藤戸神社境内脇から登り始めますが、驚いたことに神社脇には登山届箱が設置されており、その横には地元の舘野小路集落の方たちによるものか菅谷コミュニティと書かれた標識がありました。

 

ここから要害山までしばらく急な登りが続きますが登山届があるくらいなので今は雪に埋もれておりますが道もしっかりあるようです。

山頂は広くなっていてベンチがあり新発田市街が一望でき、熊がいなければ家族連れのハイキングになどには素晴らしい憩いの場になりそうなところです。

 

さてここから核心部に入って行きますが、気分はわくわくこの先が楽しみです。

時折見える大峰山方向には尾根が複雑に入り組んでおり、どのような方向で進んで行けばいいのか見当がつきません、雰囲気としては川内山塊のようです。

 

非常に道に迷いそうなくねくねとした尾根を進んでいくと、ところどころ開けてなかなか景色もいいところがあったりして、つくづく熊の出没といい縦走路が切開かれないことといい残念でならないと感じました。

そしてやがて鳥屋峰というこの縦走路最高峰の峰に達します、この鳥屋峰にもかつてお城があったそうで、藤戸神社と同様に麓集落の滝というところには地元の人たちがお滝様と呼んでいる神社があります。

このお滝神社には山の主である大蛇が潜んでいるといわれていたことを子供の頃にばあちゃんから聞かされていたことを思い出しました。

 

私は小学5年生まで早道場という集落に住んでおりましたがその村はずれに私の同級生の家があり、この同級生の家の横に大きな底なし沼があります。

お滝様の大蛇はこの沼に生息している蛙を捕食するために夜な夜な来ていたらしいということです。

この底なし沼の近くには国道290号線が走っておりますが、ある日の夜この付近の国道をタクシーが通りかかると国道に電柱が横たわっているので、車から降りて見に行ってみるとその電柱はずるっと動いたというのです。

そして電柱はくねくねとうねりだし、その時タクシーの運転手はこれがお滝様の大蛇ということに気が付いて一目散に逃げたという話があったそうです。

 

ちなみに子供の頃、私の同級生から聞いた話によるとこの底なし沼は夏の暑い日に夕涼みに行くとよく蓮の葉っぱの上に仙人が座っているのを見るそうです。

また、一度この底なし沼に落ちたことがあるそうで、すぶずぶと潜っていってしまいには地球の裏側に出てしまったそうで、ポケットから泥だらけの小銭が数枚出てきたので近くの公衆電話から家に電話をし、親に車で迎えに来てもらったという話を聞き、大変な経験をしているんだなーと当時の私は感心しきりでした。

 

話は元に戻りまして…、鳥屋峰から箱岩峠までは下り一方になり相変わらずくにゃくにゃした尾根を辿って最後は箱岩峠の大峰山登山口付近に出て終了です。

このまま菅谷集落まで下りて国道を歩いて帰ろうかとも考えましたが、良く考えてみると今日は平日で今は仕事の最中です、ちょっと時間が空いて天気も良かったので偵察と思ってここを歩いてみたのでした。

もし国道を歩いているところを知り合いにでも見つかったら面倒なことになってしまいます、仕方がないからこのまま来た尾根を戻ることになりました。

かかった時間は片道2時間半で往復5時間の偵察でした。

 

今回の山行は晴天に恵まれ、意外と明るく見晴らしがいい尾根とういことに気が付き、そして幼いころの思い出に浸ることができて大変に良い山行となりました。

でも今日は仕事の合間にちょっとだけ抜け出した山行ということで真面目な私は早く仕事に復帰するために急ぎ足で慌ただしく歩いてしまいました、いつかまた今度は休みの日にゆっくりと訪れてみたいと思います。