御神楽岳

平成24722

 

二日前に御西小屋へ行ってきたばかりで足腰に疲労があり、天気予報もあまり良くなさそうだったので日曜は疲れ休みにしようと思っていた。

ところが朝起きてみると曇り空で、標高のそれほど高い山でなければ何とか雨にあたらずに行ってこれそうな感じがした。

 

足腰が重いので気軽に行けそうなちょっとした山はどこだろうと考え、朝日連峰の祝瓶山か御神楽岳が思い浮かんだ。

どちらも家から登山口まで大体1時間から1時間半程度で着く、地元の山ではないが近い山であります。

いろいろ考えましたが時刻は午前8時をまわっています、急いで支度をして少しでも早く登山口に着ける御神楽岳を選ぶことにし、栄太郎新道に向けて登山口のある蝉ヶ平集落へと車を走らせました。

 

この付近の山々はいつも登山道の無い川内山塊の方に足が向いてしまい、御神楽岳には私自身20年ぶりに登ることになります。

いつもはどうしても登山道の無い山の方に魅力を感じてしまい、御神楽岳は素通りしておりました。

川内山塊から見る御神楽岳は実に立派で付近の山々よりも一段高く、川内山塊を見下ろしているように思えます。

しかし残念ながら登山道があるということからか、皆さんには敬遠されがちなようです。

まずは広谷川と並行してつけられている鬱蒼とした樹林帯の道を45分程度歩きました。

途中、登山靴では非常に滑りそうな一枚岩の渡渉が2ヶ所ほどありました。

そして広谷川から離れ、栄太郎新道最大の核心部に入っていきます。登山道は最初は尾根ではなく斜面に取り付き、岩肌を伴った急な登りが連続して続きます。

左側には終始、下越の谷川岳所以の大岸壁が見え隠れしております。

尾根に出ても岩の登り下りが続きますが、一般道ということもあり特に通過困難な岩場はなく、左側に展開する大岸壁に圧倒されながら、適度にアスレチックを楽しみながら登ることができました。

ただ今日は足腰に二日前の御西岳の疲れが残っていて、そして重苦しい夏の暑さにより、急な登りに四苦八苦しておりました。

 

高頭というピークまで来ると痩せ尾根ではありますが岩盤はなくなり、土の尾根になって急な登りもいくらか緩くなりますが、山頂はまだ見えず。

樹林帯の痩せ尾根をしばらく登ると湯沢の頭というところからまた下り、そして雨乞い池というところまで最後の登りに取り掛かり、雨乞い池までくると尾根が広がり、登山道は左に折れてようやく山頂に出る。

とまあざっとこんな感じの栄太郎新道ですが、とにかく急な登りが続く上に山頂まで距離がとにかく長い!

蝉ヶ平集落の熊倉栄太郎さんという方が登山道を切り開いたということですが、よくもまあこんなところにつけたものです。

 

御神楽岳は名前からもすぐ分かるように信仰の山です。

信仰登山の形跡はなかったようなのですが、遠くから仰ぎ見て手を合わせるといった遥拝をされていたことが推測されています。

栄太郎新道はその後にでも登拝路として切り開かれた道なのでしょうか?

 

地元の方々の信仰心は厚かったようで、御神楽岳山中にはいくつもの伝説が残っております。

神楽と言えば獅子舞のことを言いますが、昔は神楽のことを神座と言い「神の居られる場所」を意味しており、昔の人は神様は天から山の巨石や巨木に降臨するものと信じておりました。

あの登りで終始左側に見えていたツバメ返しと言われる大岸壁に神が降りると信じられていたのかもしれません。

山頂手前付近にある祠には高田村伊佐須美明神が祭られていて、その祠の前で西山日光寺の僧覚道という僧侶が神楽を奏でたという説や、麓に御神木があり枝葉の下で70人や80人くらいの人が雨宿りができるというほどの巨木で、炭焼きや狩猟などの仕事に折りに村人がいつもここで休憩していたということです。ある日のこと村人がいつものように休憩していると、この御神木から神楽の音が聞こえてきたという伝説があるようです。

 

山名由来についてはこれら神楽諸説のほかに、残雪模様が御幣に見えるところからきている説があるそうです。

御幣とは「みてぐら」と読み、「みてぐら」が「みかぐら」に変わったのではないかということです。

ちなみに御幣とは地鎮祭などで祭壇の四隅に細竹を立ててしめ縄を廻し、そのしめ縄に障子紙のような材質で雷型の紙を取り付けます。その紙を御幣というのだそうです。

ようするに残雪模様が雷模様にでもなるということなのでしょう。

 

山頂はガスで見通しが良くなく、ほんの数分で下山を始めました。

下山時、核心部の岩場を通過しながら谷の方を見ると黒い物がのっしのっしと歩いているではありませんか、私は「おーい!」と声を掛けると、その黒い動物は少しの間こちらを見てから一目散に藪の中へと消えていきました。

短時間の出来事で、写真は撮れず終いでした。

今年は熊が多く発生すると言われております、今度から山へ行くときは望遠レンズを持っていかなくてはと考えながら下山しました。

 

コースタイム

登山口 45分 湯沢出会 1時間20分 高頭 40分 湯沢の頭 40分 雨乞池 7分 御神楽岳山頂 7分 雨乞池 30分 湯沢の頭 30分 高頭 1時間10分 湯沢出会 40分 登山口