48

五頭山

 

先週末、山岳会の新人さんと五頭山に行ってきました。

五頭山は登山をこれから始めようとする人にとって危険な場所はまったくと言っていいほど無く、ちょうどいい具合に登りやすい山で、最初に登る山としてはこの近辺では最適な山のひとつと言えるような山であります。

午前中は小雪がちらつく天候でしたが、それでも駐車場は満杯になるくらい、地元民にとって大人気の山です。

人気の理由としてはやはり誰でも気軽に登れるところが一番だと思います。

大勢の新潟県民が集う憩の山で、入山者数は新潟県内でも随一と思いますが、日本三百名山の中にですら入っていないローカルな里山であります。

新発田市からは二王子岳と同様に大きく仰ぎみることができ、大変に馴染み深い山でもあります。

 

地元である笹神村(現阿賀野市)にとっては信仰の山で、憂婆様信仰という山岳信仰があったそうです。憂婆様とは雨乞いの神様で、近年までは五頭山ではなく五月雨山と呼ばれていたということです。

六月の大祭には白衣をまとった行者が憂婆様信仰登山をつい最近まで実施していたそうです。

また五頭山はその名の通り五つの小さな峰からなり、一の峰には五頭竜神、二の峰に薬師如来、三の峰に不動明王、四の峰には毘沙門天、五の峰に地蔵菩薩が祀られております。

一口に五頭山と言っても北は金鉢山に始まり、松平山、五つの峰からなる五頭山、最高峰の菱ケ岳、野須張、大蛇山、宝珠山といった多くの峰々で形成された連峰であります。

 

今回は私が所属する山岳会に最近入会された、まだ登山暦の浅い方と一緒の山行ということで、私は新人さんと一緒に山へ登るときは、自分自身初めて山に登った時のことを思い出すようにしています。

もう20年以上前のことになりますが不安な気持ちいっぱいで、装備もよく分からないまま春の吹雪の二王子岳を登ったことは今でも鮮明に記憶に残っており、その時の気持ちを考えながら登るように心がけるようにしています。

それに、せっかく登るのですから良い思い出を作ってほしいと、山に対し良い印象を持ってほしいといつも願いながら登ります。

当山岳会はベテランが多く、自分自身も含め新人さんの指導というかアドバイスが物足りないように感じるときが多々あり、例えば新人さんの「持っていくものは?」の質問に「普通の日帰り装備でいいよ」と答えているような有様は、ただでさえ不安に思う新人さんをさらに戸惑わせ、ますます不安をつのらせてしまっているように思います。

私は登山暦20年を越えるくらいになりましたが、未だに持ち物リストを作り、チェックしながらパッキングしております、それが新人ともなればなおさら必要なことでしょう。

県山協様式の登山計画書も新人には非常に解かりにくく、それも要因のひとつのような気がしております。

 

また、何を聞けばいいかですら分からない新人さんに「分からないことがあったら何でも聞いてね」と言うのはまだましな方で、いきなり読図を教えようとしたり、あるいは地図の見方が分からない人に「地図はいつでも出せるようにポッケに入れておくこと」なんていう指導をすることもありますが、それ以前にまずは登山をして、山の良さや楽しさを感じてもらうことが大事だと思います、って自分も人のことを言える立場ではございませんが…。

 

私の場合は新人さんに「山に登るときは作業服が一番!」と教えたり、「靴下は軍足、手袋は軍手が一番」と説明し、いきなり新人さん初登山に七厘を持って行って秋刀魚を焼いたこともありました。

そうそう新人歓迎登山で女川山塊の湯蔵山を選び、登山道のないルートを連れて行って皆に怒られたこともありました。

ある程度、改めなければならいと思って少し反省しております。

 

さて山行内容に入りますが、朝のうちは雪が降っていて景色もいまいちでした。私はどうでもいいのですが、新人さんに登山は忍耐という概念がうえつけられなければいいなと願いながらの歩いておりました。

私はといえば片手にとりたま工房のケーキ箱を持ちながら登りました。

ケーキ箱の中には生クリームがたっぷり乗っかったプリンが入っていて、ザックの中に入れていたのではぐちゃぐちゃになってしまうので手で持っていたのですが、やはりいくらプリンとはいえ手で物を持って登るということは通常の倍以上疲れます。

あげくに五頭山の場合は入山者が非常に多く、雪が踏み固められているのでラッセルがない分大変に滑ります。

それにしてもストックを両手で持って歩くぶんには疲れないのに、プリンを片手で持って歩くととても疲れる、不思議なものですね。プリンをストックのように地面に突き刺しながら歩ければ良いのでしょうけど、それはちょっと難しいような気がします。

とにもかくにもすれ違う人は「こんにちは」と言いながら視線はケーキの箱に向いておりました。

 

山頂では新人さんに寒い思いさせてはならないと考えてテントを持って行きました。その持って行ったテントは登山テントではなく居住性のいいレジャー用テントでしたので非常に重く嵩張った物でした。

昼食はその移住性の良いテントの中でコンロに火を付け、デザートにプリンを食べました。

 

昼食が終わりテントから外に出ると、さっきまで降っていた雪が止み青空が出ておりました。

青空に輝く五頭山の雪面、新人さんの「わー綺麗!」の言葉に私も救われた思いで下山することができました。