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胎内~ガラク峰~黒石山

 

はじめに

1/25000地形図を眺めていると登山として訪れる山はもちろんですがそれ以外にも非常に多くの山名が見られます。

通常の概念として、普通に登山道の整備された山に登ろうと思って地形図を見ていても目的地である山にしか目が向かないことは当たり前のことであります。

しかし少し目先を変えて地図を眺めてみると目的の山の周辺には非常に多くの山名が書き込んであり、誰が名付けたのであろう妙ちくりんな山名が多く、逆にそちらの方が気になり始めてきます。

それらの山々は私の中で眠っている探究心を目覚めさせ「このへんてこりんな名前の山はどんなところなのだろう?行って確認してみよう」という気持ちが登行意欲への原動力となっていることは間違いありません。

 

しかし地形図を見ているとあまりにもおびただしい数の山名が記載されていて、登りたいと思う山を挙げているとキリがありません。

それは山ばかりならまだしも、いろいろなルートも多くあって、そのルートまでチェックしていると大変なことになってしまいます。

休日は限られていて、しかも必ず晴れる日ばかりとはいきません、登りたいと思った山はいったいいくつ行けるものだろうか?

 

今回行ってきたガラク峰や黒石山はそれが目的地と言うことではなくルートが目的であり、前々から行ってみたいと思っていた尾根を歩くといった計画を立ててみました。

そのルートは、胎内スキー場の鹿俣ゲレンデ駐車場を起点に、右側の尾根に取り付き新発田市と胎内市の市境尾根を忠実に辿って二王子岳から派生する尾根上の黒石山とナリバ峰を経由、風倉山を通過して胎内スキー場に戻るという非常に長大な計画です。

 

山行当日

今日の天気は快晴の予報、暑くなりそう。

4時半くらいから歩き始めたいところでしたが、どうしても一人だと寝坊してしまいます、515分発で鹿俣ゲレンデの駐車場から出発しました。最初は尾根が広くて分かりにくく、尾根変わりがあったりして、注意深く進まなければ間違えてしまいます。

この状態がシコクリ峰というピークまで続きます。

このシコクリ峰から尾根が痩せ気味みになります。痩せている分、雪が落ちきってしまい藪を歩くようになります。

標高600m付近から藪尾根の登り下りを激しく繰り返します。

 

歩いても歩いても標高は600mから700mの間で、しかもこの区間はちょうど雪解けが済んだばかりで、多くの木々が春を待ちわびたかのように元気に枝を伸ばしております。

そんな藪の中、登りなのに標高がどんどん低くなったりする尾根を苦労して進んでいきました。

少し進むと右手には二王子岳が見え始めますが、すぐに見えなくなり代わりに左手にまだ真っ白い飯豊連峰が終始見えるようになります。

ガラク峰は気が遠くなるほど遥か先、果たして計画通りここを踏破できるものか心配になってきました。

気温はぐんぐん上がり日焼け止めをザックに探すも入ってない、どうやら忘れてしまっているようです。

今日は私の所属する山岳会が会山行で白山に登っていますが、そこに参加する新人さんに「日焼け止め忘れちゃだめよ」とアドバイスを送ったばかりです。

それに先日、会社の人たちに「あんたはチョコボールのようだ」と言われたので「以前のような美しい白い肌になる!」と宣言した直後だったのに…。

 

ガラク峰手前あたりからようやく藪歩きから解放され、急な長い坂を登りきれば360度大展望のガラク峰の山頂に出ます。ガラク峰は広く長い山頂をしており、新発田市からもよく見える山で、飯豊連峰が間近に見え、二王子も指呼の間にあります。

 

ここから黒石山まで悪い雪面の登り下りを三回ほど繰り返してようやく黒石山頂に出ます、黒石山はいくつもあるピークの中の一つにしかすぎず、特に目立った山ではありません。黒石山頂着が1230分、このまま計画通りナリバ峰~風倉山を経由すると最後の1時間くらいヘッドランプが必要となりそうな時間です。

最後の1時間は胎内スキー場のゲレンデ内に入っている可能性が高く、大丈夫とも思われましたが万が一スキー場前で暗くなってしまった場合を考えると登山道の有るところならまだしも無いところでのヘッデン歩きは非常に危険です。無理は禁物と判断し往路を戻るか二王子岳へ逃げるかの二者から選択することにしました。

二王子岳へ行けばどんなに遅くとも夕方6時には二王子神社に着くことができます。

今来た道を戻るなら下山は6時半くらいになりそう、しかしあの藪道の登り下りを何度も繰り返し、苦労して通過したところを戻ろうとする気がおきません。

「そういえば今日は会山行で白山に10人も行っているので誰か迎えに来てくれる人がいるかもしれない」そう思って担当の渡辺さんに電話をしてみるが、電波状況が悪くて話ができない。

このまま二王子まで向かい、どこかで電話してみることも考えたが、迷惑を掛けるわけにもいかないと考え、結局来た道を戻ることにしました。

 

行きと違い,帰りはよりいっそう藪の登り下りが長く辛く感じます。

強い春の日差しの中、大粒の汗と藪の埃を浴びて真っ黒になりながら「あ~あ、二王子に向かえば良かった!」どんなに後悔すれどももう遅い、太陽の沈む速度と競争をしながら鹿俣ゲレンデ駐車場を目指しました。

 

長時間の歩行で疲れきり、休憩をしているときにふと私の手を見ると3mmくらいの小さな虫がもぞもぞと這っている、よーく観察してみると思った通り足が八本ある、マダニだ。

ダニとひとくちに言っても地球上では現在およそ5万種類のダニが確認されていて、まだその何倍もの新種がいるといわれているそうです。

そのうち人の血を吸う種類はマダニ属とチマダニ属、キララマダニ属1種のみとされているということです。

通常のダニは肉眼で確認するのが難しいくらいの大きさの物がほとんどですが、吸血性のあるマダニ属は3mm程度と大型の種なのだそうです。

台所や布団に居る衛生害虫として扱われ、喘息などのアレルギーの元となっているのは主にコナダニ、ホコリダニ、ニクダニ、トゲダニ、サトウダニといった種類だそうです。

マダニに刺されると皮膚の炎症が生ずるそうですが痒みが無く、無理に引き離すと口先が皮膚内に残り炎症がいつまでも治まらないので、数日間ほおっておいて自然と離れるのを待つのがいいそうです。

あとで家に帰って調べてみたら、私の手の中で這っていたのはタカサゴキララマダニという種類のもので、日本国内での被害例はヤマトマダニ、シュルツェマダニと並んでもっとも多い種のひとつでした。

 

マダニの怖いところはライム病を媒介するところなのだそうで、ライム病にかかると体がだるくなり初期のうちは悪寒、発熱、倦怠感といった風邪に似た症状が出るらしく、これがいつまでも続き、特効薬がなく非常に治りにくい病気なのだそうです。

そういえば私も仕事をしようとすると急に体がだるくなって動かなくなります。おそらくこれもライム病の一種かと思われますが、20年くらい前から発症しているものと思われます。

 

ちなみによく山で見かける赤い大型のダニはアカケダニといって他のダニを食べる種だそうで、人間にはまったく無害のものだそうです。

 

さてさてこんな山中でダニにくわれていては大変、疲れた体にムチを打ちながら必死で歩きつ続け、なんとか日暮れ寸前に駐車場に下山することができました。

 

今回は久しぶりに計画通りの山行ができませんでした、いわゆる敗退です。

思っていたより雪解けが進んでいて思いのほか歩程に時間が掛かったことが第一の敗因かと思いますが、出発時間も515分でした、あと1時間早く出発していれば踏破できただろうと思います。

 

普段、私は登頂してもあまり喜びません、正月の飯豊に単独登頂したときでさえ小さなガッツポーズ2回でした、山頂で万歳などすることもほとんどありません。逆に「なぜ登頂できたのか」いつも考え、最終的にはなぜか深く反省してしまいます。

関係ありませんけど、そのくせAKBの総選挙で好きな人の順位が上がった時は万歳して喜びました…。

 

登頂に関して感情が薄いのか、執着心が少ないのか自分でもよくわかりませんが、今回の久しぶりの敗退にもあまり悔しさは感じておりません。

失敗は成功の元、登頂したときと同様に「なぜ踏破できなかったのか?」当然分析をしております。今度ここを訪れる時には必ず踏破する自信があります、といってもまあこの雪解け状況を考えると今年は無理でしょうし、あの激しい登り下りの尾根は当分の間こなくてもいいかな~。

 

大汗をかいたらなんだか甘いものが食べたくなったので、帰りにチョコボールでも買って帰ることにしました。

 

コースタイム

鹿俣駐車場 6時間25分 ガラク峰 50分 黒石山 45分 ガラク峰 5時間30分 鹿俣駐車場