二王子岳(中尾根)

平成24122

下越山岳会5名での山行

 

はじめに

この間の日曜日、正月の飯豊以来久しぶりに山へ行ってきました。

行先は特別何の変哲も無い、平凡な二王子岳で、ただ通ったルートが通称と言っていいのかどうか中尾根と言われている尾根を登りと下りに使いました。

 

さて、新発田市を代表する山といえば、ほとんどの人は二王子岳と答えるかと思います。

新発田市は昭和20年から30年頃にかけて加治村の一部、菅谷村、川東村、五十公野村、米倉村、赤谷村、松浦村、佐々木村を合併吸収したという歴史があるそうで、それを昭和の大合併というそうですが、私が生まれたのはそれから10年以上たってからであり、もちろん私の記憶にはまったくないことです、よく子供の頃に年寄りからそんな話を聞かされておりました。

 

確か私の勘違いでなければ、当山岳会には大正や明治時代を生き抜いてこられた方々が多く居られ、もしかしたら江戸時代末期の慶応年間生まれ、明治維新の生き証人であり、激動の時代を生き抜いてこられたような方々もたくさん居られると思いましたが間違ってましたでしょうか?

そんな方々にしてみれば昭和の大合併など、つい最近の出来事で、詳細に憶えておられるものと思われます。

 

二王子岳は旧川東村に聳える山で、おそらく合併以前当時は新発田市に山など無かったものと思われます。

いつから二王子岳は新発田市のシンボルのように取り上げられるようになったのでしょう?

 

私が生まれ育ったところは旧加治村(旧加治川村ではない)というところで、二王子岳は他所の市町村の山ということになり、実際子どもの頃によく遊んだ思い出のある別のふる里の山が私にとっては存在し、二王子岳はただ近くに大きく見える山といった程度で、決してふる里の山ではなく特に愛着といったものはありません。

ただ「にのんさまに雪が降り、三回目で雪が里におりてきて根雪になる」とか「にのんさまの真ん中あたりに雪の模様が七の字に見えるようになると田植えがはじまる」など、そんな話を年寄りから教えられていて、いずれにしても周囲の市町村からも大きく見えるので、何らかの目安になっていた山だったということが推測できます。

 

さて私といえば、正月の飯豊から無事に生還して以降、食べて寝るを繰り返していたところ、ほんの数日間程度にも関わらずすっかり運動不足となり、腹の肉は大きく成長を遂げ、他人に自慢できるほどとても立派なものとなりました。

この年齢になると、ちょっと油断しただけですぐに腹に肉がたまり、本当に嫌なものですね。

当然動かないものですから足腰は弱り、あまりによく寝るために床ずれになるのではと心配してしまうほどで、さすがにこのままじゃいけないと思いはじめておりました。

 

この冬の間に行こうと思っている山はたくさんあるのですが、何故だか体を動かす気になれず、おそらく正月の飯豊から帰還したら少し休みたいと思う気持ちが心のどこかにあり、さらにあまりにも悪天候が続いたことが重なりとても出かける気になれなかったのではないかと自分では思います。

しかしいい加減にどこかの山へでも行かなければと考えていた矢先に、例会で藤井さんが「雪洞泊の偵察山行で二王子岳に行くので誰か行ける方があれば一緒に行きましょう」ということでしたので、ちょうどいい運動不足解消ができると思ったことと、それに私は若いですし年寄りばかりで行くのも何でしょうから私程度の者では大した事はできませんが少しはラッセルのお手伝いができるかなと思い、愛着がなく、もちろんこの冬に行こうと思っていた山としてもまったく眼中になかった二王子岳に行くこととなりました。

 

山行報告

参加者は5名で、前会長である藤井さんと現会長の佐久間さん、県内でも有名な女性登山家でとても経験豊富な渡辺さん、それから期待の若手で成長著しい新井田さん、それから腹の肉が成長著しい私といったメンバーで、いざ蓋を開けてみれば凄いメンバーに囲まれての山行になってしまいました。

 

6時、集合場所より2台の車に便乗して登山口に向かいました。

登山口に着くと前日の雨が上がり、少し青空が見えているなかで準備をはじめました。

思ったよりいい天気になり、順調に中尾根の取り付きに辿り着きました。

雪質はここ最近、気温が高くなっていたこともあり、特に深いラッセルはなかったので、ある程度、順調に進むことができたと思います。

若い新井田さんと交替でラッセルをし、私がラッセルをすると腹の肉が上下運動を繰り返し、歩きながらビヨーン、ビヨーンと肉が下へ垂れさがったあと、元に戻る時にパチンという音と共に上方に跳ね返り、その勢いで身体がジャンプします。

ジャンプする分ラッセルがはかどるうえ、肉は脂肉なのでとても暖かくて保温効果も抜群で大変に良かったです。

今まで気が付きませんでしたが、皆さんには是非とも腹に大きな脂肉をつけて山に行くことをお勧めしたいと思います。

 

私自身この尾根は始めて歩きますが、始めて歩くところはワクワクするものですね。

二王子岳周辺は危険箇所がないようで、終始歩きやすく、特に眺めが非常に良い尾根で周囲の景色は良く見える割に二王子岳の景観を台無しにしているスキー場はこの尾根からは見えません。

痩せ尾根といった箇所はまったく無く、適度に迷わない程度に広く、急な登りや下りもなくて非常に快適な尾根でした。

尾根が派生しているところを間違わないように注意をすれば、登山道コースを行くよりここの中尾根の方がずっと良いではないかと思いながら歩きました。

 

そして無事に高知山からくる尾根との分岐点に着き昼食の時間に。そして今日はここまでということで「あー良かった」・・・、という訳にはいきませんでした。

正直、私は久しぶりの山行で足腰が疲れておりました、しかし元気な新井田さんが「上まで行きたい」と言い、他の皆さんもあろうことか「田中、おめー若げんだすけ一緒に行ってやれ!」と言うではありませんか。(訳すと、「田中さん、貴方は若いのですから一緒に行ってやってください」、念のため標準語でも書いておきます。)

渋々、早々に昼食を済ませ、新井田さんと上まで行くことになりました。

そして再びここで重い足腰と腹にムチを打って三王子の急坂を登りきり登山道と合流、そして山頂に辿り着くことができました。

山頂付近は例年だとブッシュが出ているのに今年はまったく出ていません、雪が多いのがつくづく感じさせられます。小屋は雪に埋もれており、かろうじて入り口付近が除雪されて何とか分かる程度でした。

 

そして山頂からは飯豊が良く見え、大日岳が大きい。そして真ん中には北股岳が大きな三角形で聳えていて一際目立ちます。

「しかしよくもまあ正月にあんなところに行く奴が居るもんだよ、信じらんねえや!」、「あんなところに行く奴は馬鹿か気違いとしか思えないな」と考えつつ山頂をあとにしました。

 

帰りは途中から左の尾根に入り、南俣林道の途中から分かれる林道に出て下山する予定が左の尾根に入りすぎ、高知山林道に下山してしまいました。

派生している尾根を良くチェックしながら下山したのに、踏み跡につられて間違えてしまったようです。

やっぱりどこの山でも課題があって面白いものです、間違った箇所は概ね分かります、眼中になかった山とはいえ、もう一度この見晴らしが良くて歩きやすい尾根を間違い箇所の確認をするために登りに来てもいいなと思いました。

 

二王子岳について

二王子岳は信仰の山とされ、古くは修験者が修行を積んだ山ということです。

信仰対象として、仏教の世界である仏道では飯豊に祀られた農業の神様である五つの王子権現のうち二番目の王子権現が祀られた山ということです。他の王子権現様は飯豊山中に祀られていて、途中にある一王子や山頂手前にある三王子は近年に地元集落で祀られたものではないかとされております。

確かに二王子神社が一番下にあり、中間に一王子があって、山頂付近で三王子では順番がおかしいですものね。

そしてややこしいことに仏道の権現様と同時に次元の違うまったく別の日本神話に出てくる神道の神様も祀られていて、出雲大社の主祭神であり農業の神様とも言われる大国主命、食物を支配する神様で伊勢神宮の外宮の祭神とも言われている豊受姫命といった神様のほかに一言主命、熊野加布呂命といった神様が祀られているそうです。

 

終わりに

温かい御飯に海苔の佃煮をのせて食べるととても美味しいですよね。

永谷園のごはんですよ、昔で言えば江戸ムラサキという名前で売られていたものですが、御飯にちょっとだけその海苔の佃煮がのっている様が私の頭のようだと、先日久しぶりに会った同級生から言われました。

髪の毛が少ないうえに顔は老けていて同級生とはとても思えないというようなことを言われましたが、しかし話をしているとその生き生きした話し方や考え方、また仕草や行動はとても若々しく思え、それも同い年とはとても思えないということも言われ、そのとき私はそれを聞いてすぐにピーンときました。

顔や髪の毛は仕方がないとして、登山をしているお陰で気持ち的にも肉体的にも若々しくいられるのでしょう。

山を登るためにいろいろ真剣に考え、そして体を動かし、そして綺麗な景色を眺めて綺麗な空気を吸って、思う存分楽しんでいるわけですから、若々しいのは当たり前のことなのかもしれません。

 

先ほど明治維新の話を引き合いに出し、当会の会員の皆様はお爺さんとお姉さんが多いといったことを遠まわしに書いてしまいましたが、実は皆さんも大変に若々しくて、年齢こそお爺さんお姉さんですが、その仕草を見ているとまるで青年とお嬢様のようです。

現在、どこの山岳会も高齢化が進んでいると聞いておりますが、ほかの山岳会の皆さんもきっと若々しい方々ばかりなのでしょう。

山岳会に入会している方は同じ趣味を持つ多くの人と出会い、時には大勢でわいわいがやがやと楽しく山に行き、時には厳しい山に挑戦をし、多くの仲間に囲まれながら有意義に、そして素敵に年を重ねているように思えます。

 

それらを考えると個人的に山へ登っている方、あるいは登山に興味のある方は山岳会に入会することをお勧めします。技術的なことや知識的なことなどまったく不要で、勉強の必要はありませんし、そもそもそんなものはあとからついてくるものでしょう、まずは楽しく山に行くことが目的です。それに面倒な人間関係や人との関わり合いなどの心配もまったく必要ありません、現に私などはまったくの自由人ですからねー。

特に若い方は是非、下越山岳会に入会して、将来一緒に素敵な年のとりかたをしませんか?

 

あっそうそう、そういえば219日にスノーシュー体験会を下越山岳会主催で実施します。もし都合のつく方はそんなイベントあたりから参加してみてはいかがでしょうか?(詳しくは下越山岳会ホームページにて)私も豚汁係で参加しようかなって思っています。私が作った山で食べる豚汁は美味いですよー。

 

追記

二王子岳はカメラを持って行かなくて、写真はすべて新井田さんからの提供です。

どうも私は今年、カメラというか写真に縁がないようです。

それから下山後、相変わらずだらだらとした日々が続き、行先が二王子ということもあったからなのかどうも日記を書く気になれず、時間が掛かってしまいました。

そんなことで10日も前の山行日記になってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました。

 

さらに、もうひとつ困ったことが・・・、私は二王子岳が故郷の山ではなく眼中にないと書きましたが、今年80周年記念を迎える下越山岳会は二王子岳周辺の山々がテーマといったことをあとで聞かされました。

そんな私が所属する山岳会の節目にあたる年の最初の山行の日記だというのに余計なことを書いてしまったものだと反省しております。

 

うーんでもなぁ~、理由はいろいろありますが私は二王子岳をはじめとした新発田市周辺の低山はどーも好きになれないんですよ・・・、こりゃあごめんなさいねー。

新発田市近郊の山でも道の無いところなら面白みがあって好きなんですけどねぇ・・・。

でも二王子岳などは新発田市民でなくとも大変に人気のある山ですから、やっぱ私って変わり者なのでしょうかねぇー?

ましてや道の無い山が好きだなんて・・・、まあ皆さんそんな訳で私は変わり者ということで簡便してくださいね。