残雪模様の話  胎内からはエブリ爺ではなく鯛頭

 

本格的な梅雨に入り、毎日じめじめした日が続いております、梅雨前線が停滞中は登山も停滞してしまいます。暇つぶしにと思い、書いてみました。

 

最近、節電という言葉をよく聞きますが、震災の影響でなくとも節電は大事なことだと思います、その節電に大変有効な出来事がありました。皆さんも参考にしてみたらいいと思います。

 

先日の会社でのこと…、その日は大変に蒸し暑い日で、我慢できなくなったちょっと太めの事務員がエアコンのスイッチを入れました。

私はエアコンが嫌いなので、事務員がよそ見をしている時にこっそりスイッチを切りました。スイッチを入れた事務員が「なかなか涼しくならないね。」と言うと専務が「今に涼しくなるよ、ちょっと待ちなさい。」と言います。しばらくして専務が「少しずつ涼しくなってきたね。」と言うと、二人の事務員が「そうですね、やっと涼しくなりましたね。」という会話がありました。もちろんその時点では専務も事務員もスイッチが切れていることに気が付いていません。暑さ寒さも気の持ちようで何とでもなるということが証明されました。ただ専務や事務員の顔を見ると汗だくになっていましたが…。

 

その日の昼休みは河原へ行き、昼飯を食べながら川を眺めていると急に釣りがしたくなったので、早々に昼食を済ませて、急いで釣道具を取りに家へ帰りました。自宅へは往復1時間掛かりますが、どうにもこうにも釣がしたくて、いてもたっても居られず、このままじゃ午後からの業務に支障がでると思ったので、仕方なく釣をすることにしました。

ただ私の経験上、こんな時は釣れないものです。何気なくはじめた時の方が良く釣れるものです。午後から胎内川で一通り釣りをしましたが、案の定まったく釣れませんでした。「釣れないなー。」と思いながらふと飯豊を見上げていると、エブリ差岳の残雪模様が鯛頭になっているのが見え、今度は山へ登りたくなってきました。

 

エブリ差岳の山名由来はエブリという農耕器具を持ったお爺さんの残雪模様が見えることから付いたとされておりますが、その残雪模様は関川村から見えるもので、胎内市からは鯛頭の残雪模様が見えます。昔、旧黒川村の農民はこの鯛頭の残雪模様を目安に農耕を始めたとされております。鯛頭と言いますが鯉でも鰯でも、とにかく魚の頭のような模様をしており、縁起をかついでその年の豊作を願い、鯛の頭にされたものではないかと思います。

鯛の頭模様は5月の中旬頃から6月の中旬頃にかけて見ることができます。胎内市の鍬江集落あたりの眺めが一番良いようですが、今年はもう終わったので、来年はもしここを通るようなときは注意してみたらいかがでしょう?

 

残雪模様のことを書いたので、ついでにエブリ差岳近くにある光兎山についても調べてみました。

エブリ爺が現れる関川村には光兎山という山があります、標高のわりにアプローチが長く大変に厳しい山ですが、今年は干支の山なので訪れる人は多いようです。

さて干支ではなく雪形の話ですが、関川村の道の駅に置いてある観光パンフレットを見ると兎形の残雪模様が出るとされておりますが、実は光兎山になったのは近年のようで、以前は鳥の光鷺山あるいは小鷺山だったそうです。これはおそらく鳥の鷺の雪形ではなく、兵庫県にある世界遺産の姫路城が、その美しさから別名白鷺城と云われているように、光兎山も麓から見える雪が被った姿は美しく、その端整な姿から鷺の字があてられた山名なのではないかと思います。これらによって兎の雪形は後で付けられたものだということが分かります。

しかしこの光兎山は以前、羽黒修験者が修行を積んだ山で、今でも山岳信仰の非常に強い山でもあります。そこから神様の入り口という意味の神先(こうさき)からきた山名の可能性も否定できません。

 

それから雪形でもっとも有名なのは皆さん御存知、馬の残雪模様で有名な白馬岳でしょう。

しかし白馬と言いますが、実は雪の解けた部分が馬形の模様になり、本来は黒い馬の残雪模様が現れるようです。以前は麓の農民がこの黒い馬の残雪模様が出ると、田んぼの代掻きをおこなったとして代馬岳と呼んでいたそうです。ところが国土地理院が地図の作成時に間違って白馬岳と書き込んでしまったことにより、そのまま白馬岳になってしまったのだそうです。

それ以外にも日本全国、雪形の山はあまりにもたくさんあり、到底ここでは書ききることはもちろん、すべて調べ上げることもできません。

 

釣りをしてすっかり気が済んだ後、会社に戻ると事務員と専務が私の帰りを待ち構えており、皆さん怒っています。事務員に「エアコンのスイッチ切ったでしょ!」と怒られてしまいました。

そして次の日も暑くなり、事務員が「スイッチ切らないでよ!」と言いながらエアコンのスイッチを入れたので、今度はこっそり設定温度を最高の30度にしておきました。

また事務員が「なかなか涼しくならいわねぇ。」と言うと、また専務が「今に涼しくなるからもう少し我慢しなさい。」と言いました。