令和3年2月14日

三峰(糸魚川市)

 

週末は晴天になるということで、先日見舞われたぎっくり腰も随分と癒えたことからリハビリをかね、ちょっと遠出して上越辺りの登りやすそうな山に行こうと糸魚川市の三峰に向かいました。

今回は前日に大山で御一緒した雪野さんに「簡単に登れそうだから一緒にどうか?」と声を掛け二人で登ってみることになりました。

麓の小見集落から高度差は450m程度しかなく距離的にも近いのですぐに登れそうな山だと考えておりました。

地形図を見る限りではどこを登っても必ず悪い場所がありそうですが、それは僅かな区間でしかなさそうなので雪野さんを誘った次第であります。

小見集落から小見川に掛かる橋を渡り林道を伝ってから適当に登りやすそうに見える尾根を登ろうと集落内の中をよろよろと車を走らせるとすぐに小見川に掛かる橋が見つかり、橋の周辺はちょうど車が置けそうな広場となっておりました。

ここに車を停めて準備をしていると集落の区長さんかもしれないような人が来たので「車停めておいても大丈夫ですか?」と声を掛けると「大丈夫だよ、山に登るんですか?」と聞いてきたので「はい、ちょっとそこの山まで」と答えると「へー、そこの山に登るんだ」と言いながら行ってしまいました。

麓の集落の方で、しかももしかすると区長さんだったかもしれない人でさえ三峰の存在を知らないようです。

地形図には三峰と言う山名が記載されておりますが山麓の人たちには馴染みの薄い山なのかもしれません。

我々のような登山者でも糸魚川市の三峰と言われてピンとくる人はほとんどいないと思われますが・・・。

橋を渡ると降り積もった雪に隠れてはいるものの、沢沿いに何となく道があることが分かり、そこを辿っていき、しばらく進むと大きな車道と合流しました。

この車道は鉄塔を巡視するために付けられた道路だと思いますが、もちろんこの時期は除雪がされなくて、ただただ車道上をラッセルしながら歩くしかありません。

しばらく進むとやがて鉄塔が現われ、そこは広場になっておりますがすでに日射しは暑く、ついつい日陰を求めてしまいます。

杉の木により日射しが遮られる場所で地図を出し「どこから登る?」と雪野さんとあれこれ話をしますが、なかなか有効なルートを見つけることができません。

実を言うと私としては本当はまだしばらく林道を歩いた先の尾根に取り付こうと思っていたのですが、暑い日差しの中で深いラッセルに辟易しており、面倒になった私は「一番手前の登りやすそうな場所から尾根に取り付こう」という話をし、雪野さんの賛同を得て、鉄塔を過ぎてすぐの辺りの斜面にさっさと取り付いてしまいました。

ただし、そこはかなり急斜面となっており不安と言えば不安でした。

登るにつれ傾斜はどんどん増してきて危険度が徐々に高くなっていきます。

今回は雪野さんを誘った手前、安心安全で登ってもらいたいと思い、一生懸命にステップをつけながら急斜面と格闘しました。

しかし私がどんなにステップをつけたとしても安心できるようなものではありませんし、急斜面は変わりません、雪野さんは相当怖かったのではないかと思いますが、文句を言わずについてきてくれています。

「悪いな」と思いながらも急斜面を登り切り、とりあえず一安心。

もうここからは大丈夫と思ってその先を見ると今にも崩れ落ちそうな雪が乗った痩せっぽっちの尾根が目の前に続いており、その光景を目にした私たちは愕然としてしまいました。

三峰は地形図では分からないけど、急斜面と痩せ尾根で形成された大変に厳しい山だということに、ここで初めて気が付きました。

ここまで来たならもう行くしかないのですが、とても怖いというほど尾根は痩せてなく、注意して歩けばなんとか大丈夫そうな感じでもありました。

私はゆっくりできるだけ小刻みにステップをつけながら進むように心がけましたがなかなか快適なステップというわけにいかず、2番目を歩いていた雪野さんの心境はどうだったのだろう?かなり恐怖を感じながら歩いていたことだろうと思います。

あとで怒られるかもしれないと考えると私は痩せ尾根の怖さよりも怒られることへの恐怖で足がすくみました。

この痩せ尾根の区間は山頂まで続いており、時折雪の隙間からは密に生い茂る蔦藪が見えることから、おそらくここは無積雪期に踏破しようとすれば大変な苦労を強いられるのではないでしょうか。

やがて尾根は細身を維持したまま三峰山頂に向けて急な登りとなり、深いラッセルと痩せ尾根に耐えながら登りきると目の前がいきなり開け、ようやく山頂に到着することができたと安堵の胸をなでおろしました。

今までの痩せた尾根がまるで嘘だったかのように広くなった山頂はブナに囲まれているものと思われますが積雪によって少数の大木があるのみです。

山頂から下界を眺めれば濃い青しか見えない空と日本海の青が能生の町の上に広がり、とても爽やかな景色となっております。

反対側に目を投じれば火打山や焼山、金山といった頚城連山が真っ白い姿で聳え、その手前には昼闇山から鉢山、烏帽子、阿弥陀といった海谷山塊の峰々が壮絶な姿で聳えております。

ほとんどの人が登ることのないであろう山頂で過ごす時間は道の無い山を登った人にしか味わえない楽しい魔法の時間となります。

この素晴らしい景色の中で昼食タイムとしましたが、私は下山後にマリンドーム能生で海の幸を食べたかったので、雪野さんは結構食べていたようですが、私は軽く食べるだけにしておきました。

三峰について雪野さんの考察では「山頂から日本海側を見ると尾根続きのところに他に二つの峰が聳えており、ピークが三つあるから三峰だ」と言いますが、奥にもピークがたくさんあって何をもって三峰というのかよく分かりません。

付近にはこの三峰の他に上越市名立にも三峰があり、以前に登りましたがそこもまたどこの部分が三峰なのか判然としませんでした。

どちらの三峰も山麓民にはあまり馴染みのない山のようで、信仰といったものの形跡は無いようですし、秩父近辺で盛んな三峰信仰からきたものではなさそうです。

おそらくそれらはどこかの集落から見て山頂が三つあるように見えたところからきているのではないかと思われますが、そこがどこなのか、またそれが定かなのかも分かりません。

下山時は気温が高くなっていたので雪崩にも注意しながら慎重に下りました。

私的には急な壁や痩せ尾根があって、しかも山頂は素晴らしいところで、それはもう楽しかったのですが、雪野さんには怖い思いをさせて悪かったと思いましたが少し怒られただけで済みました、もしかしたら雪野さんも楽しかったのかもしれません。

登山道にとらわれず自分で考えたルートを登る、そしてそこには静かな自然しかない、やはり道の無い山は楽しいものです。

帰りは予定通り能生マリンドームに寄って美味しい海の幸を食べて、腹いっぱいになって帰りました。

 

コースタイム

 

小見集落 1時間05分 尾根取り付きヶ所 1時間55分 三峰山頂 1時間05分 尾根取り付きヶ所 35分 小見集落