平成29年4月16日
日白山~タカマタギ
越後三山を中心とした魚沼から巻機山、谷川連峰を経て湯沢に至る、いわゆる奥利根源流域に聳える峰々は名山がひしめいており、それらの山々は新潟県の北部に暮らす私にとって飯豊や朝日といったホームグラウンドの山々に次いで好きな山域であります。
豪雪地帯に位置するこの山域はスキー場などの人口施設が多く、ある程度開発されているうえ関東方面からの交通の便が良いということから、特にここ近年では登山者がかなり増加しているように思います。
それでも日本アルプスあたりと比べると観光目的の開発もそれほどエスカレートしていないようで、まだまだ自然の持つ厳しさが多く残っているところだと思います。
そんな山域の中で以前から気になっていた日白山とタカマタギというところに今回は足を運んでみました。
新潟県の中越や上越の登山道の無い山々は積雪期にバックカントリースキーヤーの入山が目立つところが多いようで、この山も御多分に漏れず山スキーで訪れたといった話を良く聞きます。
そんなこともあっていくらか藪が出るのを見計らってから訪れたいと考えておりました。
また、スキーヤーが登れるくらいだからそれほど難しい山ではないだろうと思って、今回は気楽な気持ちで訪れた山行でした。
入山口はどこにしようかいろいろ迷いましたが、結局オーソドックスに二居集落から二居峠を経てまずは東谷山に登って、そこから日白山に登頂しタカマタギを往復するルートをとることにしました。
下山も往路ではなくどこからか適当に周って下りようと考えました。
車は宿場の湯の離れた駐車場の隅に停めさせてもらいました、そこから二居集落内を歩いて二居峠に至る林道入り口まで行きました。
林道の入り口にはカステラ屋さんではなさそうですが似たような名前の会社脇を通ります。
除雪もここまでで、締まった雪の上を歩きながらジグザグに延びる林道を時折はずれたりしながらほどなく東屋のある二居峠へと至りました。
二居峠は三俣集落へと続いており、ここからは林道を外れていよいよ尾根の登りとなります。
とは言っても尾根上には完全な道が付けられていて、これは尾根の先に見える鉄塔の巡視路であることが分かります。
鉄塔を過ぎると尾根は少し痩せ気味になりますが、いい加減安定してきた雪のお蔭であまり苦労することなく通過し、東谷山手前で広くなだらかになって展望も広がり稜線漫歩へと様変わりします。
東谷山の手前ではテントが張られていて雪上には歩いたばかりと思われる足跡が二人分確認できます。
サイズからして女性、あるいは小柄な男性か、もしかしたら老夫婦かもしれないと考えましたが張られていたテントは堅牢だけど重めというエスパースだったので、きっと若い人だろうと思いました。
「もし女性二人組だったらどうしよう、下山は他を周らないで往路を下山して一緒にここに戻ってくればいいかもしれない」なんてことを考え始めました。
「ああ、そういえば今日の作業着は鼠色だ、今流行りのお洒落な物にすれば良かったな」。
そんなことを考えていると思った通り日白山山頂手前で二人の女性とすれ違いました、彼女たちは日白山に登ってきたので、あとはこのまま下山するということです。
私は日白山からタカマタギに立ち寄ってから下山するので、一緒に山を下りることはできなさそうです。
彼女たちと御一緒させてもらうのは諦め、日白山頂からタカマタギへと向かいました。
それにしても東谷山から続く360度の大展望はとても素晴らしい!
谷川連峰が間近に見え、巻機山、越後三山の山並みも大パノラマとなって目の前に広がります。
終始広くて歩きやすい尾根、そして絶景、そんな景色がタカマタギまで延々と続きました。
それまでブナやダケカンバの木々が疎だった尾根は、タカマタギ山頂付近手前からハイ松や桧といった針葉樹が目立つようになり、雪が解けたらきっと深い藪に鎖されるのだろうなと思いました。
日白山に戻る途中で栃木県から来たという人にすれ違いました。
何故、わざわざ栃木から来たのか聞いてみると、ここはNHKで放送されたとのことで、土樽側の入山口には登山届用の箱まで設置されているとのことでした。
中、上越の山々はだんだん俗化という魔の手が伸びてきているようです。
そういえば、近くの旧湯之谷村にある涸沢山やトヤの頭、あるいは上越の仏ヶ峰などはいつか冬に登りたいと思っていたのに登山道が切り開かれたとのことで、途端に登る気が失せてしまったところです。
ここも登山道が切り開かれるなんてことにはならないでほしいと思いました。
タカマタギから再び日白山山頂まで戻りましたが、非常に歩きやすい尾根のお蔭で予想していたほど時間がかからず、あまりにも早く下山ができそうです。
でもそれではせっかく天気が良いのにもったいない、このまま平標山まで行こうかと考えましたがそれはそれで強行です、いろいろ迷いましたが次回のお楽しみということにしました。
それでもこのまま平標山へ向かって進み、最低鞍部付近まで行ったところで尾根の状況を確認してから小さく派生している尾根を下り、二居集落へと戻りました。
下っている途中でようやくお昼近くになり、朝の冷え込みから一転して汗ばむほどの陽気に気温はどんどん上がり、遠くでガラガラと雪が崩れる音が聞こえ、文字通り春が音をたてながら足早にやってきていることが分かります。
長い冬もようやく終わりを迎え、春と言う大舞台を待ちわびる自然の祈りの音のようにも聞こえてきます。
ずっと鼠色だった空の色も今日は淡い群青色。
「私の作業着もこの空のように模様替えをしなくちゃならない」、今日はそう思えるような山行となりました。
コースタイム
二居集落 2時間05分 東谷山 50分 日白山 45分 タカマタギ 50分 日白山 45分 平標山最低鞍部付近 1時間10分 二居集落