大平山
平成26年4月20日
ゴールデンウィーク一週間前の日曜は連休山行に備えて体力温存をしようと静養日にするつもりでした。
しかし静養といっても家でゆっくりしていると、かえって体調を崩したりするので、天気次第で軽い山に登るつもりでおりました。
それから私自身、最近は鷹ノ巣山、頭布山や小環状など厳しい山行を続けてしまっていたものですから今度は気楽に登れる普通の山へ行きたいと思っていたということもありました。
軽い山へ一人で行くのも何ですし、どうせなら楽しく山に行きたいと思い知り合いの女性を誘っていたところでした。
ところが声を掛けていた女性から前日になって「風邪で具合が悪い」というキャンセルの連絡が入りました。
せっかく日曜日は天気も良さそうですし、それなら気軽に登れる普通の山はやめてちょっとした面白そうな山へ行くということで予定を変更することにしました。
「でも行先はどこにしようか?」あれこれ考えていると以前に関川村の田麦峠から頭布山に登った時、峠から頭布山とは反対方向に道が付いていてハイキングコースと書かれた看板が立っており、そのハイキングコースを辿るとどこに行くのかずっと気になっていたのを思い出しました。
地図を見ると尾根は大平山へと続いているようですが、大平山は南大平ポーラースターから登山道が整備されているのみで、他のルートがあることは聞いたことがありません。
「あの登山道はどこまで続いているのだろう?もしかして大平山へと続く道なのではないだろうか?もしそうだとしたら大変な穴場だ」
私は冒険心をくすぐられ、あの小さな道にいろいろ思いをめぐらせておりました。
そこで今回はその道をどこまでも辿り、できれば大平山に登頂するという計画ででかけることにしました。
大したことの無い山行なので、いつものように勇んで出かけることはありません、朝はゆっくりと家を出ました。
そんなことで、なんだかんだしているうちに田麦峠に着いたのはもう10時30分をまわっておりました。
風もなくポカポカ陽気の日曜日、やや薄曇りですが今日は絵にかいたようなハイキング日和です。
万が一用に山菜を入れる袋をザックにしのばせて出発です。
良く整備された登山道も歩き始めてからすぐに荒れ加減になりましたが、これは予測していたことです。
人に知られていないところなんてそんなものだと思いますし、もし誰かが整備をするとなると莫大な労力や費用が必要になるでしょうから、おそらく何らかの理由で誰かが一時的に道を切ったものだろうと思っていました。
それでも日当たりの良くないようなところはしっかりと道は残っておりますし、それに新しい鉈目もあるようです。
やがて尾根と合流するところに三角点が現れ、はっきりとした道はここで終わりました。
標高はちょうど500m、ここから尾根は分岐していて大平山は左方向なのですが、地図を見ないで景色だけ見て、右の大きな山を大平山だと勘違いして、そこに向かって進んでしまいました。
そして山頂と思っていたところに出たところ、もちろんそこは大平山の山頂とはまったく違います。
別の山頂に立って、ここで初めて間違っていることに気が付きました。
標高も530mしかなく、何度も地図を見返しますが固定観念とは恐ろしいもので頭の切り替えがなかなかできず、広い山中で地図を見てもどこにいるのかさっぱり分かりません。
とにかく分岐まで引き返し、左側の尾根を進むことにしました。
それにしても予測していることと違うことが起きた場合、修正は簡単でないということに気が付き、良い勉強をしたと思いました。
左の尾根を進むと藪はどんどん酷くなり、しばらく我慢すると目の前に大きな尾根が見え始めました。
その大きな尾根を見て、そういえば家で地図を見ている時「必ず大平山の登山道と合流するはずだ」と考えていたことを思い出し、その大きな尾根に向かって藪と格闘しながら進み、尾根に出る少し前から再び鉈目と道が現れ、やがて登山道と合流しました。
ここからはブナの美林に囲まれたとても静かな登山道を、暖かく柔らかい春の陽射しを浴びながら悠々歩いて山頂に辿り着きました、大平山は閑静なブナ林の広がる素晴らしい山です。
こんな良い天気なのに人の姿は見られず、雪渓上に足跡が無いことから登山者は一人もいないことがわかります。
標高こそ570m程度しかないのに、雰囲気は1000m級の山に劣らないと思います。
南大平からの通常のルートでも登り下りが多く、なかなか登りごたえのある山で、近くにある光兎山、鷲ヶ巣山などと同様に朝日連峰前衛の山と言った感じが随所に見受けられる山です。
何故、この山には入山者が少ないのか不思議でならないのですが、ここは山ビルの生息地であり、あと一月もすると登ることができなくなってしまいます。
それが原因なのか分かりませんが、今日の様な暖かな日曜日に、まだ4月ということで山ビルもお出ましになってないのだから、少しくらい登山者がいてもよさそうに思えるのですが・・・。
でも私個人的にはこんな静かな山が好きです。