平成27年3月22日
五頭連峰 宝珠山~菱ヶ岳
今朝の新聞を読んでいると、イヌワシが激減しており中にはバックカントリースキーヤーが近づいたために営巣を放棄したつがいもいるといった内容のことが書かかれておりました。
私も仕事の都合により飯豊山麓からヘリを飛ばすことがよくありますが、そのたびに野鳥の会からイヌワシとクマタカの営巣地の位置図が渡され、近くを飛ばないようにとの指示があります。
これら営巣場所は口外無用となっており、愛好家等の方たちに場所を知られると多くの人が押し寄せる可能性があるため機関の重要な機密事項となっております。
飯豊では石転沢以外ではそれほどスキーヤーは多くないでしょうけれど、他の山域ではここ近年急増したバックカントリースキーヤーによる遭難懸案も多く発生しているということもあり、話題になる機会がはなはだ増えているようです。
何事も人が多くなるとすべての面に悪影響を及ぼすようですね。
それにしても何故バックカントリーという名称なのでしょうか?
ただ単にコース外滑走でいいのではないでしょうか。
今回の山行日記は私の住んでいる新発田市の近隣に聳える五頭連峰の記録です。
五頭山といえば古くから登山道が整備されていて昔から気軽に登れる人気の山でした。
市街地からも非常によく目立つ山で、登山ブームによって訪れる登山者は一気に増加したのではないでしょうか。
季節を問わず厳冬期の平日でも人が多くて、それが休日ともなれば人でごったがえしており、私としては正直なところとても行く気になれない山のひとつです。
とりわけ五頭連峰の中でも五頭山と菱ヶ岳に人気が集中していて、はっきり言ってあまり展望の良くない藪に囲まれた山なのに何故あれほどの人が集まるものか私には不思議でなりません。
近い山であり、危険ヶ所もほとんど無いので初心者でも軽い気持ちで登ることができるということから人付き合いで私も結構訪れる機会がありますが、そのたびに何だか嫌な思いをして帰ります。
山頂付近はいつもお年寄りの常連客の溜り場となっていてまるで病院の待合室のようになっており、どうも馴染むことができません。
特に嫌だと思うのが「これは俺の山だ」的に語る登山者がたくさん居られるというところです。
おそらく地元のお年寄りか山岳会関連で事業等に参加したりしているような登山者の方々なのでしょうけれど、「俺は五頭の主だ」とまでは言いませんが、それに近いようなことを語る人がたくさんいて、ちょっと悲しかったりもします。
ある時などは厳冬期にもかかわらずしっかりとトレースがつけられた登山道を人ゴミに紛れながら知り合いを連れて登っていると、早々に下山してくるお年寄りがいて、すれ違う人みんなに「俺が毎日登ってトレースつけているんだよ」と自慢げに言っているようで、大抵の人は「ありがとうございます」と御礼を言っているようでした。
それを見た私はワザとトレースから外れた脇をラッセルして登っていると、その人は私にもすれ違いざまに「俺が早朝から登ってトレースをつけた」と言ってきました。
「ああそうですか」と一言だけ返事をすると首をかしげております、おそらく御礼でも言ってもらいかったのでしょう、あるいは褒めてもらいたかったのか・・・。
そしてもう一度同じことを言ってきました。
礼を言うのも何かしゃくにさわるし、無視するのも良くないような気がしたので「早朝から登ってトレースをつけた」に対し私はとっさに「早朝から登って豚ロース食べたのですか?それは良いですね」と返事をしておきました。
私は「山で焼肉はいいよねー」と独り言を喋りながらさっさとトレース脇をラッセルしておじさんから離れました。
まあこんなおじさんはどこの里山にでもおられるようですが、登山の歴史が長い五頭山はとりわけそんな人が多いのではないかと思います。
そう言えば新潟の某山岳会が五頭山の標柱を整備したところ、それが気にくわないと思った人がいたようで、標柱は倒されそこには大きな字で「勝手にたてるなバカ」とまで書いてあったそうです。
きっと犯人は自分は五頭山の主のようなつもりでいて、自分の山に勝手なことをされると面白くなかったのではないかと思います。
矢筈岳の標柱もかなり悪評をよんでおりますが、それとはまた別次元の問題であろうことでしょう。
まあ、人が多くなるとどうしても面倒な人間模様が渦を巻き、せっかく自然を楽しもうと山に登っているのになんだか嫌になってしまいます。
いくら山が好きだと言えそんなところに行ってもちっとも楽しくなんかありません。
そんな避けて通りたい五頭山ではありますが、先ほども書いたように主峰の五頭山と最高峰の菱ヶ岳に人気が集中しており、そこを外せば何とか少しは楽しめるのではないかと思います。
今回はその五頭山から菱ヶ岳区間を避け、最南端の宝珠山から菱ヶ岳までの区間を歩いてきました。
以前に最北端の金鉢山から菱ヶ岳間を歩いており、この南部の区間もいつか歩きたいと思ってずっと気になっていたところでありました。
この区間は人が少ないとは言え登山道が整備されています、せめて雪があれば登山道は隠れてしまい人もいないだろうということと、それに五頭連峰は見晴らしがあまり良くなく展望は部分的にしか望むことができないようですので、木々の葉が落ちて景色を楽しめる季節にと思い、どうしても雪のあるうちに行きたいと思っておりました。
昨日は女川の烏帽子岩に行って12時間も歩き続けたので体が疲れておりましたが、せっかく天気も良いようですしクールダウンにはちょうど良いと思って訪れることにしました。
まずはなかなか手強い宝珠山へ登ります、この山は標高の割にいくつも登り下りがあって山頂が遠くて大変です。
まるで小さな光兎山のようです。
雪は締まっていてツボ足で十分に歩くことが出来ました。
宝珠山手前の八咫柄山辺りから素晴らしい展望となり、ほどなく宝珠山山頂へと到着します。
山頂は360度の展望が得られ、なかなか良いところだと思いますが、何よりもここは盛期でも比較的人が少なくて山そのものを楽しむことができます。
個人的には五頭連峰の中ではここが一番好きです。
昨日の烏帽子岩で日焼けをしてしまったので私はここでたっぷりと日焼け止めクリームを塗ります。
これでもかというほどベットリと塗りたくったので相当に私は酷い顔になっていたことでしょう。
ここからはいくつもの登り下りを繰り返しながら徐々に高度を上げていき、やがて大蛇山へと至ります。
それぞれの山頂では必ず日焼け止めをドバっと塗ります。
そしてここから一投足で野須張、菱ヶ岳へと至り、そのたびに日焼け止めを塗りました。
きょうはいつもの登山に比べて随分と気持ち的にも楽でした、野須張と菱ヶ岳の最低鞍部がやや痩せ尾根気味になる程度で、ほとんど難しいところはなく、楽々縦走を終えることが出来ました。
下山後、車のミラーを見てみると日焼け止めで顔が真っ白になっており、とても恥ずかしくて早く帰って顔を洗いたくなりました。
でもあまりにも腹が減ったのと喉も乾いていたのでコンビニに寄って買い物をしました。
店員さんはどう思ったでしょうか?コンビニの駐車場で改めてミラーで顔を見るとその青白くなった顔は見方によってはあおびょうたんにも見えます。
もしかしたら神経質そうでひ弱なガリ勉お兄さんに見られたかもしれません。
それにしても今回ここを歩いてみて改めて感じたことは二王子岳などに登っても感じるのですが、新発田市近郊の山々には心休まるブナ林がありません。
雪国の山ですからもちろんブナの木は多く見られ、特に二王子岳の胎内側や飯豊に連なる側には素晴らしいブナ林がありますが二王子岳登山道のある側にはブナの大木が少なく、それはこの五頭連峰や焼峰山、俎板倉山、あるいは菅名山塊などにもあまり見ることができず、おそらくよく探せばあるのでしょうけれど、あの母の懐に抱かれているような安堵感のあるブナの大木林が欠落しているように感じます。
私自身、新発田近郊の山々が好きになれないのはどうもそれも多く有る理由のうちのひとつなのだということに今回歩いてみて気が付きました。
先日行ってきた葡萄山塊や昨日の女川山塊などは大変に素晴らしいブナ林があるというのに・・・。
それから野須張と大蛇山の山名についてあれこれ考えてみましたが、まったく分かりませんでした。
どちらとも山名辞典などいろいろある山の辞典や図鑑類には一切記載されていない山名でした。
おそらく山麓の方たちに何らかの理由で呼ばれていた山名が地元の阿賀町発行の登山地図に記載されたものだろうと思います。
五頭山本峰などと違い山岳信仰などの形跡もないようで、ただ麓民には山の恵みを与えて、野須張や大蛇山などと呼ばれ親しまれていたのではないかと思われます。
いつか山麓集落の古老の方にでも会う機会があれば是非聞いてみたいなんて思いました。
さて今回の訪れた五頭連峰は小さな山脈ですが意外に多くのピークがあり、加治川から尾根が立ち上がり主稜線としては最北端の金鉢山から始まって松平山、五頭山、菱ヶ岳、野須張、大蛇山、宝珠山と連なって阿賀野川へと尾根を落としています。
その中で僅かに金鉢山から松平山の区間にだけ登山道がありませんが、菱ヶ岳から宝珠山の区間には確か平成12年だと思いましたが、登山道が整備され現在に至っております。
この菱ヶ岳から宝珠山区間の登山道整備についても先ほどのバックカントリースキーの話のように登山者が増加し町興しのためなのか分かりませんが山は切り開かれ、結果的に環境破壊をしているわけで、とても残念なことだと思います。
そういえば私の勤務する会社の近く、飯豊の御膝元である奥胎内では工事関連の重機類は緑色か青色以外は立ち入り禁止ということになっております。
派手な色は猛禽類の生態系に悪影響を及ぼすからというのだそうです。
これは自然に優しいといった行政のパフォーマンスであると思いますが、山を切り裂いて不要とまことしやかに囁かれているダムを建設しているのですからそれは論外として、最近の登山者はどうでしょう、やたらカラフルな服を着ている人を多く見かけます。
自然保護を唱えながら一番自然に悪影響を与えているのは登山者なのではないのでしょうか?
ここ最近はバックカントリーばかりがやり玉に挙がっておりますが登山者ももう少し考えて入山すべきではないかと、近年に登山道が付けられたという宝珠山から菱ヶ岳の区間を歩きながら幸いにも今の時期は雪で埋め尽くされておりますが、明らかに多くの人跡が垣間見られるこのルートを歩きながら、そんなことをいろいろと考えました。
コースタイム
赤松山公園駐車場 2時間 宝珠山 3時間30分 菱ヶ岳 1時間30分 菱ヶ岳駐車場