紅葉の飯豊

 

梶川尾根~ダイグラ尾根

 

928日~29

 

 

 

現在、私の所有するザックの数はおそらく30個から40個くらいあるのではないかと思います。

 

一番小さいものは25リッターから一番大きい100リッターのあいだで大小さまざまなザックが我が家の倉庫に収納されております。

 

古いザックは山菜採りに使ってしまったのでボロボロ、ドロドロになり破棄したものもあるので極端に古いザックはもうありません。

 

一番古いザックでもおそらく10年くらい前のものだと思われます。

 

 

 

使用頻度が高く所有数の一番多い、いわゆる主力サイズは70リッターと80リッターで、次に使用頻度が高いのは日帰り用の25リッターとなっていて、どのサイズもそれぞれひとつの物を使うのではなく適当にローテーションを決めて使うようにしておりますが、買ったはいいが体に合わずほとんど使っていない物等がどうしてもありますし、それからあまりにも酷使しすぎて壊れる寸前の物をこれ以上使って壊したくないという理由からいつまでも大事にしまっている物まであり、なんだかんだいっているうちに大量の数を所有することになってしまったように思います。

 

 

 

理想のザックを求めてあれこれためしてみたりもしましたが、荷物が重ければ辛いし軽ければ楽ということは当たり前の話で、体に合った良いザックを探すということは非常に良いことですが、ザックひとつで劇的に苦楽が変わるということはあり得ません。

 

そんなことでいつも道具のことを考えると結局のところ道具に頼るような登山をしてはいけないという結論に落ち着いてしまいます。

 

 

 

ただし良いザックを探すことは悪いことではありませんし、もちろん体に合った担ぎやすい物は楽ですし、もしかしたら少しでも疲れが軽減できるものかもしれません。

 

体に合う合わないは値段と比例するというわけではなく、必ずしも高価な物が良いとは限りません。

 

私の場合、高価なブランド品であるグレゴリーはどうも体に合わないようです。

 

グレゴリーはアメリカのメーカーなので、大柄なアメリカ人に合うような作りからなのでしょうか?とは言っても日本人の皆さんでもグレゴリーを担いでいる人は多くみられますから国は関係ないのかもしれませんね。

 

あるいはもしかしたら私が貧乏体質なのだからかもしれません。

 

でもミレーのザックは古いものだと私の体に合いますし、それからオスプレーもすこぶる良好な担ぎ案配ですから、そうでもなさそうですね。

 

 

 

まあザックの話はこれくらいにして、詳しいことはいつか道具の話で書こうかと思っております、でも今年は忙しくて道具の話など山行日記以外のことについて書く暇がなく、ザックについて書けるのは果たしていつになることやら…。

 

 

 

今回の山行で使うザックは久しぶりにオスプレーにしてみました、巷でよく出回っているイーサーという物ではなくワンランク値段が高いアルゴンという商品名で売られている物です。

 

85リッターということで標記されておりますが、他の85リッターに比べるとやや大きい感じがします。

 

アルゴンにしろイーサーにしろ私にとっては非常に担ぎやすいザックであり、もったいなくてあまり使うことがありません。

 

使ってみて「これいいな」と思ったものは大事に奥にしまいこむ悪い癖が私にはあります。

 

変な話ですが、道具は使うと傷んだり劣化したりするものだから、良いものはなかなか使わずにあまり良くないと思った物を先に一生懸命使ってしまうという、まるでバカみたいな習性が私にはあります。

 

 

 

でもそれが功を奏したまに良いことがあります。

 

使用したザックは傷まない程度にぬるま湯で軽く濯いでからしっかり乾燥させて収納しますが、収納時にザックの中の物を出し忘れることがあって、久しぶりに奥から出してきたお気に入りのザックの中を見たら無くしていた昔のガスコンロとボンベが錆びてボロボロになって出てきたなんてことがありましたし、なんだか見たこともないような記憶にない寝袋カバーが出てきたこともありました、おそらく相当前に買ったのではないかと思われます、もちろんその寝袋カバーは時々使っております。

 

あとはパンやお菓子が出てくることなど日常茶飯事ですし、空のペットボトルが出てくることなども良くある話です。

 

出てくるペットボトルは空の物がほとんどですがたまに未開封の物が出てきて、それがまた懐かしいファンタゴールデングレープのペットボトルだったりするのでそれは大事に保管してあります、それからファンタアップルも保管してあります。

 

それから非常に残念だったのは、ザックの中に何年も前から入れっぱなしにして忘れていたファンタメロンを再びそのまま気が付かずにザックに入れたまま山へ持って行き、さらに間違ってそのファンタメロンを飲んでしまったことがありました、やはりどこかかび臭かったのですが、それより私は古い貴重な資料を喪失してしまったことを大そう悔みました。

 

ファンタの話ばかりになって恐縮ですが、当時はスポーツドリンクといえばポカリスエットくらいしかなくてお茶も僅かな種類しか出回っておりませんでした。

 

今となってはスポーツドリンクやお茶など多種多様に有りますが、私はあのキュウリの絞り汁を甘ったらくしたような味のポカリスエットがあまり好きでなく、お茶も当時は急須で入れた熱いものしか概念にありませんでしたから山に持っていく清涼飲料水はファンタかコーラに限っておりました。

 

さて、長々と関係のない話を書いてしまいました、すっかり忘れておりましたがもしかしたら山の話など書いてみようかと思っているところであります。

 

 

 

今回のルートは梶川尾根を登り、門内小屋を視察して御西小屋を経由して大日岳まで行ってから飯豊本山の山頂を踏み、ダイグラ尾根を下山する周回ルートを行くことにしました。

 

本来、今回の山行は頼母木小屋の検査という名的でお役人さんも一緒に登るつもりでしたが、当日の朝になって急に「行けません、一人で行ってきてください」と連絡がきました。

 

私一人で行って見てもどうにもならないので、梶川尾根から自由気ままに飯豊を歩くということに切り替わりました。

 

しかし来年の工事のために門内小屋の視察だけはしっかりとしてこなければならなりません。

 

あとは特に細かな計画を立てることなく、今年登っていないというただそれだけの理由で梶川尾根を登り、車の関係からダイグラ尾根を下りるという計画で、あとはどこでも泊まれるようにテントを持って、適当に自由気ままに飯豊を歩きます。

 

 

 

梶川尾根の途中、五郎清水でハイジさんと会いました。

 

なんでも今日は梅花皮小屋の管理人だそうで、ハイジさんの管理人は楽しそうです。

 

稜線まで来ると紅葉が始まっており、赤や黄色に色づいた綺麗な稜線を喜びながらまずは門内小屋に到着しました。

 

門内小屋では今日の管理人の石山さんが小屋の前で出迎えてくれました。

 

今日はどこまでといった目標が特別ない私はただでさえ話し込んでいると面倒くさくなってしまうところ、石山さんに「今日はここで泊まればいいんじゃないの」なんて言われ、ましてやビールなど飲んでしまうと動きたくなくなってしまいます。

 

だからビールは飲まずにそこで思いだしたのは「そういえば、門内小屋の私の荷物の中にファンタグレープが残っているはず」管理人室に保管してある荷物の中を探してみると無事にファンタグレープが見つかり、それをザックに入れて門内小屋をあとにしました。

 

 

 

夏から秋へとさしかかり、すでに黄金色に輝く草原が眩しいギルダ原と北俣岳を通過し、今度はハイジさんが待っている梅花皮小屋へ立ち寄るとすぐに「はい、どうぞ」とビールとつまみが出てきました。

 

それをありがたく頂戴するとまた腰が落ち着きます、酔い覚ましにファンタグレープでも飲もうかと考えましたがあとの楽しみにとっておき梅花皮の美味しい水を飲んでハイジさん管理人の誘惑にも負けず、梅花皮小屋もあとにしました。

 

秋の長雨と言うように秋雨前線の影響で例年の9月だとなかなか晴天に恵まれることはありません、それに山の紅葉は足早いもので、あっという間に過ぎ去ってしまうものです。

 

晴天と紅葉、それから休日がタイミング良く合わさるときはそうそう滅多にあることではありません。

 

目に映る景色をしっかりと目と心に焼き付けながら、紅葉燃える飯豊の稜線をゆっくりと進み、管理人不在、羽田さんのいない御西小屋に到着、大日岳まで行くか迷いましたがそのまま今日は御西小屋で一晩お世話になることにしました。

 

私が到着後も次から次へと宿泊者がやってきて、御西小屋は満杯になってしまいました。

 

夏場でもこんなに人が入ることなどなかったのに珍しい、ここにきて天気が安定したことで入山者が増えたのでしょう。

 

静かな山が好きな私は「やっぱり大日岳に向かい適当にその辺で寝りゃあ良かった」なんてふうに思いましたが、宴会する人も無く、いびきの音もあまり無く、夜中にトイレへ行く人も少なくて満員の割にゆっくり眠ることができました。

 

そのお蔭で目が覚めると私の周りには誰も居なくなっており、時間はまだ5時半なのに私が熟睡しているうちに皆さん出かけてしまったようです。

 

 

 

小屋の中には完全に私一人、窓から大日岳を見ると朝日が差してオレンジ色に輝き始めている。

 

「さあ、今日も良い天気だ」ゆっくりと朝食を済ませ、まずは大日岳へ向かい、今年はこれが見納めになるかもしれない標柱を見て大日岳を下っていると、どこかのツアー登山の御一行様がぞろぞろ行列を作ってやってきました。

 

擦れ違い様に添乗員と思われる方から「15人です」と声を掛けられたあと「山頂の標柱が新しくなったんですよ、見てきましたか?」と聞かれ、私は心の中で「誰に物を言っているんだ!」と思いましたが「あーそうですか、誰が建ててくれたのでしょうかねえ」と言ってさっさと本山に向かって歩き始めました。

 

それにしても今年の飯豊は雨の日が多かったうえに道路が崩壊したりして登山客が減り、特にツアーのキャンセルが多いと聞いておりましたが、まったく無くなったわけではありません、今年少なかった分、来年は多くなるのでしょうか?

 

せっかく観光地化されていなくて自然の多い飯豊なのに、それが金儲けのために利用されていると思うと嫌になってくるのは私だけでしょうか?

 

 

 

気を取り直し、御西岳の広い稜線で昼寝をしたくなるような陽気、赤や黄色に染まった絨毯のような稜線をゆっくりと歩きながら飯豊本山に到着。

 

紅葉は初秋の頃が一番見頃のような気がします、紅葉最盛期と思われる頃に山に行って見るとすでに稜線上の大半は枯れ木になっていたなどということは良くある話です。

 

飯豊の稜線もあと数日ほどで木々の葉はすっかり落ちてしまい、儚くも冬支度に入り、あとは雪を待つだけとなるのでしょう。

 

まだまだ赤や黄色の葉がすっかり残っている時にゆっくり訪れることができてとても良い山行となりました。

 

 

 

そして厳しいダイグラ尾根を下山しましたが、何度歩いてもここは本当に大変です。

 

苦しみながらも鈍った体に活を入れたつもりで、「しっかりしなければ!体を鍛えて正月に備えなきゃ!」刻一刻と近づいてくる正月の飯豊を思いながら歩いて無事に下山することができました。

 

 

 

ところで、この文章を書きながら思い出しましたが、門内小屋でザックに入れた私のファンタグレープはどこへいったのでしょうか?

 

家に着いてからザックの中身は全部出して、ザックは我が家の物干し竿に吊るされております。

 

そう言えばすべてのサイドポケットの中を確認していなかったかもしれません、でもどうせファンタグレープはレギュラー商品なのでおそらく何年経っても貴重なお宝になることは考えらえません「帰ったらポケットから出さなくっちゃ、でも何だかまた忘れそう…」。