入り平尾根偵察時の写真
谷川岳の写真
二日間の偵察登山
4月13日、14日
4月13日
飯豊 入り平尾根偵察
残雪期に入り飯豊周辺のバリエーションルートに行こうと思い、どこにしようか考えるととても多彩にあることに気が付きます。
良く知られていて多くの人が歩いている、いわゆる残雪期の花形とも言えるようなルートがいくつかあろうかと思います、または極限られた人しか歩いておらず一部の人にしか知られていないようなルートもあると思います。
でも本当は自分で地図を見て踏破の可能性を判断してバリエーションを開拓するようなことが一番面白いのではないかと感じます。
自分自身もっといろいろなルートから飯豊に入山できればと思うのですが、あの広大な飯豊のバリエーションを開拓するには時間が無いことはもちろん、それなりの技術や知識も持ち合わせておらず、私自身明らかに力量不足であります。
今回、偵察に向かった飯豊の入り平尾根は残雪期の花形とはとても言い難いほどマイナーなバリエーションルートだと思いますが、地元の方々にはよく知られていて数少ないものの入山される方は数年に数名程度は居られるようです。
また、山頂を目指すような登山と言った形のものではありませんが山菜取りの人たちが入山していることもあるのではないかと思われます。
この入り平尾根はすぐ隣の一般的に難易度が高いと言われている出と平尾根と対比するようにエブリ差岳に向かって延びていて、東俣川の渡渉が最大の難所と言われているようです。
入り平尾根は数年前から狙っておりました、しかし限られた休日の中で、とりあえず有名な人気のあるコースばかりを選んでしまって、なかなか入り平尾根までは足が向かないことも事実でした。しかし、そんな人気のコースもある程度歩きつくしてきたので、ようやくこの入り平尾根にも本格的に挑戦してみようという運びになったというのが正直なところでしょうか。
でも今になってみれば人気のあるようなコースはたとえバリエーションであっても面白さを感じなくなっており、そんな理由から静かな入り平尾根を登る気になったということも確かです。
土曜日の朝、二日前から春の雪が降り、この時期としては珍しく積雪を記録した中での出発となりました。
奥川入荘の横山さんに挨拶をし、車を止めさせて頂いて10センチほどの新雪を踏みながらまずは西俣峰に向かって登り始めました。
上に行くほど新雪は深くなり大曲の辺りで積雪は30センチほどになっておりました、ラッセルは深いところだと膝上まであります。
昨日までの寒気が残っているようで時折、強く吹雪きます。
3月や4月に何度も飯豊の稜線に行っており、荒れれば真冬並みとなることは知っておりましたが、やはり厳冬期ほどの凄まじさはありません。
西俣峰からは左へ向かうのではなく右へ向かいますが「左の正規ルートだと気楽に行けるのになー」なんて思いながら渋々正規ルートから外れて鞍部である上ノ境を目指します。
尾根は結構急な下りで、木や枝に掴まりながらでなければ下りられないようなところもありました。
上ノ境からは東俣川へ下りますが、上ノ境まで行かなくても東俣川へ下りられるところがあるか観察しながら進みました。
しかし結局は上ノ境まで下りて来てしまいました。
ここから東俣川へ下り、渡渉できるところを探すのですが、かなり上流まで遡らなければ渡渉できそうもありません。
長い距離の危険な斜面をトラバースし、最後は崖状になったところを木に掴まりながら通過して、ようやく渡渉できるところまでやってきました。
渡渉を終えると目指す入り平尾根は目の前にあります、しかしまた左に右に2回渡渉しなければ尾根に取り付くことはできません。
渡渉点を探すと、まだ十分に渡れそうなところがありました。
このころから天気はどんどん悪化する一方で、風が強まり吹雪は止みません。
今日はいずれ天気が回復するということは分かっておりました、それに明日は晴天になるということも分かりきっておりました。
ところが深いラッセルと強風、吹雪に足が前に出ません。
いろいろ考えた末、とりあえず今日はここで退散することにしました。
上ノ境まで登り返さなければなりませんが、あの危険な急斜面のトラバースは避け、少し急な尾根を強引に登って上ノ境まで戻りました。
ここから西俣峰には戻らず兎ダナイまで行き、兎ダナイから梅花皮荘へと下りました。
最後は随分と藪が酷くなっておりましたが、予想していたことでした。
実は今回は偵察山行ではなく一泊二日の準備で、要するに本番装備で向かったのでした。
しかし今回は何か登る気がしませんでした。
自分の中でまったくの無知な状況で計画性が低いまま行ってみるということは精神的な面で不安要素だけが強く、足が重くなる一方でした。
登山をするにあたり、体力はもちろん大事ですが、精神面は大きいものです。
しかし、あとで振り返ると入り平尾根取付きヶ所でまだ11時40分でしたので時間的にも余裕があり、おそらくエブリ差岳小屋まで行けたと思います。
また、天気も予想通り15時頃から急激に回復したのですから、十分に行くことができたと思います。
私は今まで情報が極端に少ないちょっと難しそうなルートや登山道の無いルーとなどは必ず偵察に行って「よし!大丈夫だ!」と判断しなければ絶対に入山することはありませんでした。
実はすごく臆病者でありまして、ちょっと難しそうなところに簡単に入山できるような度胸がないのが悩みであります。
良い言い方をすれば慎重派なのかもしれませんが、要するに単なるビビりのチキン野郎なんです。
それに私程度の者ではいきなり入山しても簡単に踏破できるほど力が無いと思うので、自信がない登山はいつも回避するようにしております。
それなのに私のことを知らない人は「体力任せで登る無鉄砲なやつだ」とか「無計画で何も考えずどんどん進んで行くだけのやつだ」なんて思っている方もいるようで、現にそんなことを言われたこともあります。
私のことを体力があると勘違いしている方も多くおられるようです。
正月に単独で北俣に登頂したら「危険な無鉄砲登山をするやつだ」なんてことを言ってくる人もいました。
結構、自分なりにいろいろ調べてしっかりと計画を立ててやっているつもりなんですがねー。
それに体力があるということは良いことなはずなのに、体力があると勘違いされ、あたかも体力があることイコール無謀登山をする人みたいに思われて、何故だか謂れのない誹謗中傷を受けるようなこともあり、逆に損をしているように感じることも結構多いものです。
でも私のことを本当に良く知っている人や、何度も一緒に登っている人は誰もが必ず私のことを「すごい慎重だ」とか「完璧な計画」とか言ってくれます。
誰にどう思われようと、自分に近しい人がそう言ってくれるだけで十分それで良いのかな、なんて思っておりますが…。
そういえば、私の見かけがもしかしたらちょっと野蛮っぽく見えるのかもしれません。
だてメガネでもして、髪は7:3にわけて、スーツでも着込んで山に登れば誤解が解消できるかもしれません。
なんて思いましたが、良く考えてみると7:3にわけられる髪の毛が私にはありません、それに顔が黒いのでやっぱりだめですね。
今回の偵察山行は、慎重派という意味で自分らしいと言えばそうなんですが、偵察山行とは言い訳であり、無意味に敗退をしてきてしまったような気もしており、時間がたつにつれ「行けばよかった」と後悔の気持ちがばかりがどんどん大きくなっているというのが正直なところです。
4月14日
谷川岳
一泊の予定で入り平尾根に向かったものの引き返してしまい、日帰りでどこかへと考えてすぐに思い浮かんだのが谷川岳でした。
谷川岳には厳冬期に登りたいと前々から思っていて、とりあえず残雪期に偵察に行っておこうという考えで向かいました。
登山口で指導センターに顔を出してみると「今年はいつまでも寒くて天気が悪い、その割に雪が少なく、あまり良い年ではない」といったことを職員さんが話しておられました。
それを聞いてちょっとがっかりです、できれば少しでも厳冬期の情景が垣間見て帰りたいものです。
確かに下界から見ると尾根に雪が少なく、痩せたところは岩肌が露出していて、頂稜部に広大な雪の壁が見える程度です。
とりあえず幕営候補地やどんな雪の付き方をしているのかよく探るため西黒尾根を山頂目指して歩き始めました。
それにしても通常ルートは安心安全です、最近の私の登山形態にはなかった非常に珍しいお気楽登山に今日はなりそうです。
晴天ということもあり西黒尾根は入山者が多く、もちろんしっかりとした登山道、たとえ道が雪で埋もれていてもトレースは多くの入山者によりバッチリ付いております。
素晴らし好天に恵まれ、今日は谷川岳ハイキングです。
アイゼンもピッケルも出すことなく山頂手前の雪壁まで登りましたが、ここもステップがしっかりと刻まれているので何も危ないことはありません。
山頂付近ではさすがに風は冷たく、皆さん防寒着や雨具を着込んでおりますが、私は面倒なのでシャツのままトマの耳からオキの耳へと行き、風をしのげるところで軽い食事をしてから下山を始めました。
ちなみに谷川岳のトマの耳とは手前の耳であり、オキの耳とは奥の耳という意味だそうです。
山頂には富士山の浅間神社が分配され祀られており、以前は女人禁制の信仰の山だったということです。
浅間菩薩の伝説や信仰登山あるいは女人解禁のエピソードなど山にまつわる話は数多く、それだけ歴史の深い谷川岳ですが、今回はちょっとした偵察に来ただけなのでそれらの話はいつかの機会に書きたいと思います。
雪が少なく大した成果を上げることができないまま、今度は天神尾根を下りますが、これも偵察のうちです。
西黒尾根を下ればグリセードが楽しそうですが、我慢しました。
天神尾根も上部はグリセードで下れます、しかし途中から急斜面が終わり、岩場が露出します。
それにしても天神尾根は人が多く、先日行ってきた西穂高ほどではないにしろ行列ができています。
西黒尾根では先行者に近づくとすぐに道を譲ってくれましたが、天神尾根は初心者が多いせいなのか後ろから近付いても知らん顔をしている人が大半でした。西穂でも感じたのですが、あれほど多くの人を待たせて長蛇の列を作っているのにまったく気にしない人が多くいて、驚きました。
どこの山でもマナーが低下しているのではないかと思えます。
ちょっと藪っぽいところを通過するところがあり、年配の女性が立ち往生して渋滞しているので人ごみを縫って女性のところまで行き、ステップを付けて下りやすくしてさしあげました。
するとその女性は「私は初心者なんですからね!」と威張り口調で一言。
何も初心者だからといって威張ることはない、あたかも初心者を労わりなさいと周囲の皆さんに言っているようで、せっかく親切でステップを付けてあげたのに当然のようにそんなことを言われ、益々人の多い山は嫌いになってしまいました。
まあ天神尾根はロープウェイがあるから混雑しているわけで、どうせ私が谷川連峰に来るなら盛期は縦走でもするだろうし、単独ならここに来ることはないだろうと思いながらロープウェイ乗り場へと下山しました。
天神尾根は幕営できそうなところが多く、雪洞も可能なようです。
日本海気候の影響下にある山なので、厳冬期はとても難しくなるでしょうけれど天気に恵まれれば、飯豊あたりに比べればそれほどでもないのではと感じました。
ただ先ほども申し上げましたが、雪が少なくて偵察の成果はあまりありませんでした。
昨日の入り平尾根といい、今週末は不完全燃焼の二日間でした。