日時 平成23年5月14日

 

行先 十字峡周辺の山々その1(ネコブ山)

 

 

はじめに

いきなり山とは無関係な話しになり恐縮ですが、イギリス出身のプログレッシブロックバンドで1960年代後半から活躍しているピンクフロイドというバンドを皆さん御存知でしょうか?ダークサイド・オブ・ザ・ムーンというアルバムがアメリカのビルボード誌ヒットチャート圏内に15年以上も入ってギネスにも認定されているといった記録を持つバンドです。1970年にアトム・ハート・マザー(邦題は原子心母)というアルバムを発表、ホーンを多用し、合唱団を起用した23分にも及ぶ非常にジャズ色の濃いこの曲は、今でもテレビを見ていると時々耳にすることがあります。

そのアルバムジャケットには一匹の大きな雌牛が描かれておりますが、残雪期の山に登り、その残雪模様を眺めているとアトム・ハート・マザーのアルバムジャケットの雌牛を思い出すことがあります。

とは言っても私の経験上、山好きに音楽好きは少ないように感じておりますので、こんなことを書いてもピンとくる方は少ないものなのでしょうかね?

私の所属する山岳会にもロック好きは大勢居られるようですが、それは同じロックでもクライミングの方で、音楽の方ではありません。

今回、行ってきたネコブ山はその残雪模様が大変に牛っぽく感じたものですから、ついこんなことを書いてしまいました。

 

私自身、普段ホームグラウンドにしている山は飯豊や朝日になりますが、ネコブ山は越後三山の山域の山になります。

いつも飯豊や朝日ばかり登っていて、たまに他の山域へ行くと大変に楽に感じるのですが、越後三山やその周辺の山々に関しては別で、飯豊や朝日と同様に体力的には大変に厳しく、本気で臨まなければ登頂や踏破は難しい山域だと、私個人的には認識しております。

 

本来、今回は十字峡を拠点に一泊二日でネコブ山、下津川山、本谷山、越後沢山、丹後山といった越後三山周辺を取巻く山々を周回してこようと計画したのですが、悪天候と強風、それから密度の濃い藪に阻まれ、一泊二日の装備を担ぎながらも日帰りでネコブ山だけ行って来たことを、今回は敗退なので簡単に書こうと思います。

 

山行日記

車は三国川ダム管理所までしか入れませんでした。三国川ダム駐車場に車を止めて車道を十字峡に向かって歩きます。終始、目の前には今回通過する桑の木山が白く確認できます。

約45分かかり十字峡を過ぎた導水管の階段下に着きました。

導水管脇に沿って付けられた高度差100mの階段を一気に登ります。階段から先は少し岩場になりますが、足場はしっかりしています。明瞭な踏み跡のある急登がしばらく続きますが、振り返ると八海山が大きく見え、左側には中の岳、兎岳、大水上山、丹後山、越後沢山、本谷山と続く稜線が綺麗に見え、気が紛れます。急登が終わると山とは思えないほどの大変に広い大地に出ます。ここが桑の木山で、ここまで来ると急に大きくネコブ山が見えるようになり、その奥には下津川山が飯豊の北股を思わせるような美しい三角形でひときわ高く聳え立っております。ここからネコブ山まではすぐですが、雪はほとんど落ちて黒々とした藪が続いています。おまけに空まで黒い雲に覆われてきて風が強まってきました。

 

このまま稜線に出るとかなりの強風が予測できます、果たしてそれなりのテン場があるものかどうか…、稜線上も見るからに黒々としており、越後三山系は草原帯より笹薮の頻度が高く、稜線上の雪解けが早く笹薮が多いということは尾根が広くないということが推測できます。新潟県側からは稜線上に雪は見えませんが、風向きからするとおそらく群馬県側に張り出した雪庇が残っているとも思えますが、クレバスが多くテントが張れなさそうな気もしますし、それに風を避けるために深く雪が掘れるかどうかも分かりません。

うーん、頭の中ではいろんなことを考えてしまいますが、それはすべてが憶測に過ぎません。やはり一度、最適な時期に歩いてみることが必要ということを強く感じました。

晴天ならまだしも、ポツポツと落ちてきた小雨に無理は禁物、いろいろ思案しましたが、下山を決意しました。

でもまだ時間も早いので「ここまで来てもったいない」せっかくだからネコブ山までだけでも行くことにして、藪に突入しました。

 

私自身の感覚からして、場所にもよりますが朝日連峰の藪は背の低い灌木の密度が濃く、大変に厳しい藪だと思いますが、越後三山系の藪はそれとはまた違った厳しさがあります。根曲がり竹の密度が異常に濃く、その根曲がり竹の中に灌木がある混成の藪で、なかなか進むことが困難な藪です。

ネコブ山に登頂するにはどうしてもその混成藪を通過しなければなりません、しかしあまりの酷さに途中から雪渓に出てしまいました。雪渓に出ると急に視界が明るくなり、驚きましたが、サングラスのレンズが藪にさらわれてしまっており、顔にはフレームだけが残っている状態でした。

ここからフレーム越しに雪渓を見上げると何とか行けそうなので、アイゼンを着け雪渓を登りきり、無事にネコブ山に到着。

ネコブ山についてはいろいろ山名由来や歴史等を調べてみましたが、よく分からずじまいでしたが、小さな小さな猫の耳のような峰でちょこんと雪の上に山頂部だけが出ている姿は猫の頭を連想するには十分な姿形でした。

一説によるとネコブは木の根の瘤からきている根瘤ということが書かれているようでしたが、猫部の方がお似合いのような気がしました。ああ、でも残雪模様は牛を連想します、とは言ってもその牛のような残雪模様はネコブ山に限ったことではありませんがね…。

 

登頂後、時間があるので、そのちょこんとした山頂部で30分程昼寝をして、下津川山の方へ時間にして1時間程度進み、尾根や藪の状態の全貌を確認してから下山を開始しました。

今日はサングラスが汗で曇らなくて良かったと考えながらレンズが無いことをすっかり忘れてフレームだけのエアーサングラスをしたまま無事に十字峡に下山しました。