平成31年4月17日
川内山塊 坪ノ毛
川内山塊の地元、五泉市在住の雪野さんから「川内に変な名前の山があるよ」と聞かされました。
確かに地形図を見ると川内山塊の隅のあまり目立たないあたりに坪ノ毛という奇妙な地名が書かれています。
通常、山名であれば山、岳、峰といった文字が付くのに毛とはいったい何なのだろう?
よく木の生えていない山が毛無山と名付けられるなど、毛は樹木を表す言葉として使われますが、果たして坪ノ毛はどうなのでしょうか?
国土地理院発行の地形図では1980年発行のものには坪ノ毛という地名は無く、そこには標高だけが記されております。
平成以降に入ってから発行された地形図には坪ノ毛の表記があり、そのことから一般的には古くから認知されていた地名ではないものかと思われます。
1965年発行の川内山とその周辺という本によると修正前の御神楽岳図幅に将牙岩山という山があって地元では坪ノ毛と呼ぶと書かれています。
将牙岩山に関してはそこにコガイワというところがあって、それが小ヶ岩になり将牙岩に転化されていった内容のことが記載されています。
1965年の時点では地元ですでに坪ノ毛と呼ばれていたこの山は果たしてどんなところなのだろうか?名前のように窪地にでも木が密集しているのだろうか?
実際に行ってみようと雪野さんと話をしていたのですが、どうにも休みが合わず結局雪野さんが去年の4月に単独で訪れてきました。
来年こそ私も絶対に行こうと思っていたわけでありますが、いよいよその日がやってきたという運びとなりました。
当日は開通したばかりの悪場峠まで車が入り、夜明けを待って早々に歩き始めます。
いつもは30分以上寝坊するのに、今日は15分しか寝坊しませんでした。
かなり雪が無くなった悪場峠から佛峠まで登り、裏手に祀られている山の神に手を合わせようと祠の前に立つと杉の根を踏み抜いて祠の前で転んでしまいました。
安全を祈願しようとして転ぶとは不吉ですね、今回は幸先の悪いスタートとなりました。
カタクリが群生するへつり道を進んで水無平へと降り立つと雪はまだらに残っていて、毎度のことなのですがここで道が分からなくなってしまいます。
できるだけ雪を拾って進みますが、ここですでにちょっとした藪歩きとなってしまいました。
水無平で道が分からなくなった私はもちろん木六山への登りもどこなのかさっぱり分かりません。
本来、道があるはずなのですがこのルートは今までまともに道を歩いたことがないので、その道がどこにあるのか見当皆無といった状況で、いつも泣く泣く適当に藪の斜面を登っています。
今回も少しでも藪が薄いと思われるところを登りますが、それなりに難渋します。
藪の中を苦労しながら登っていると、もうすぐ稜線というところでひょっこり道が出てきました。
今回の山行は木六山から先が核心部になるはずなのですが、もうすでにいっぱい核心部を歩いたような気分です。
ようやく道と合流した先で再び道の傍らに山の神様を祀る祠があり、手を合わせようとしたら杉の根に足をぶつけて転びそうになりました。
やはり今日は不吉です、この先無事に行って来られるといいのだが、不安がよぎりました。
山の神様から木六山まで登山道と残雪を交互に拾いながら進み、最後に急斜面を登りきって無事に到着しました。
左後ろを見るとはるか先に坪ノ毛が見え、去年訪れた奈羅無登山が対峙するように中杉川を挟んで聳えています。
どちらも直線距離だと近いのに尾根伝いとなるとかなりの距離を歩かなければなりません。
木六山から次のピークまでは雪原を歩けますが、ピークを過ぎるとすぐに尾根は狭まり、いよいよ藪との格闘が始まります。
狭い尾根は雪がすっかり落ちていて、天然杉が生い茂る藪の中を猛烈な勢いで下ります。
しかし案の定、踏み跡が付いているので、どうにもならないほどの大藪ではありません。
急な痩せ尾根を一度鞍部まで下りきると今度は急坂を登ります。
上り下りが急で、しかも杉、松に灌木混じりの藪は先の見えるところが少なく、位置関係が分かりにくい尾根となっていて、二つ目のピークを登りきったところのやや広めの尾根は二つに別れていてどちらに進めばいいのか少し迷いました。
その後も相変わらず上り下りはいちいち急ですが踏み跡があるので、これには非常に助かります。
しかしそんな踏み跡も徐々に薄くなってきているようで、中間付近の609m峰を登りきると、山頂はシャクナゲの海となっており、とうとうここで踏み跡がなくなってしまいました。
609m峰からの下りも相変わらず完全に道は途切れたままで、さらにちょっとした岩場があって下りにくかったです。
それ以降も途切れた道は時々姿を現すものの、薄い踏み跡程度のままで、思うように距離が稼げず、時折見える山頂もなかなか近づいてきません。
今日は気温が随分と上がるとのことでしたが、体がまだ慣れていないこともあってか暑さでバテバテの状態です。
ほとんどが藪の中を歩いているので直接日差しを受けずに済むことだけはせめてもの救いでした。
やがて山頂に向けて最後の登りのところまでようやくたどり着きましたが、ここからが長かったです。
登れど登れどいつまでも山頂は見えず、次を登りきればと我慢して登りきってもまたその先に長い斜面が見え、そんなことを数度繰り返して、ようやく斜面は終わり、平坦となったところで山頂に着いたことに気が付きました。
大きな杉に囲まれた細長い山頂は景色を見ることができず、足元は灌木に覆われて単なる藪となっているのでゆっくり休憩することすらできません。
雪野さんから「山頂から少し先まで行けばいいところがあるよ」と聞かされていたので疲れていたのですが「もう少し」と思ってしばらく山頂付近の痩せた尾根を進んで杉林を抜けると、残雪広がるブナ林へと様相は一気に変わり、そこは広くなだらかな平坦地がとなっておりました。
ブナの木々の間から日本平山とマンダロク山が間近に見え、場所によっては真っ白い飯豊連峰の見える場所がありました。
ここで小高く残雪の解けきった場所にどっかり座り、しばらく休憩しました。
時折、山稜を吹き抜ける風が心地よく、木陰で寝転んでウトウトしてしまいました。
登頂したからといって安心するわけにはいきません、今日は神様を拝もうとして2度も転んだのだから、とにかく事故の無いように細心の注意を払って帰らなければなりません。
帰り道の途中で一度軽く昼寝をしてしまいましたが、とにもかくにも何事もなく無事に木六山へと戻りました。
そして再び神様の祠の前に立った時は転ぶことなく神様に下山の報告をし、これでようやく神様とのわだかまりが解け、すべてを水に流してお互いが分かりあえたような気持になりました。
桜が満開となり春のポカポカ陽気が続く一年で一番過ごしやすい時。
そんな季節に満を持して訪れた坪ノ毛はとても暑いところでした。
コースタイム
悪場峠 2時間30分 木六山 3時間10分 坪ノ毛 3時間10分 木六山 2時間 悪場峠